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堕落 (新潮文庫 た 13-12)

堕落 (新潮文庫 た 13-12)

堕落 (新潮文庫 た 13-12)

作家
高橋和巳
出版社
新潮社
発売日
1982-07-01
ISBN
9784101124124
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ジャンル

堕落 (新潮文庫 た 13-12) / 感想・レビュー

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えも

蔵書の再読■とは言え30年ほど前に読んだきりで筋を全く覚えておらず新鮮!■満州国建設の夢破れ、引き揚げた日本で混血孤児の保護施設を立ち上げた主人公が、その取組を表彰されたとたんに崩壊し、破滅的な行動をとっていく■周りから見れば、立派な園長が堕落したわけだが、本人にしてみれば慈愛の取組自体に違和感があり、つまり堕落だったのでしょう■ちなみに解説では国家の堕落の意だと書いてありますね。

2014/05/30

しゅんしゅん

満州国建設の夢破れ、過酷な流刑を経て引き揚げた本土で混血児の保護施設に心血を注ぎ込んだ青木隆造。政治的な野望を社会的貢献によって再生させたが、世間に功績が認められた瞬間に何かが崩れる。戦争が遺した心の曠野は癒えない。本質の理解と程遠い国家と世間から誤解されるように注目された時、あの日死んだはずの自分を再び何かと心中させるように堕落していく主人公の心情が痛切すぎて、国家を裁くように自身を裁く姿の描写は圧巻。道徳の皮を被った罪を仮借なき瞳で射抜き、政治的である人間の姿をこれでもかと串刺しにする視線に慄然する。

2021/07/08

ふみふむ

理想を求める自分と欲望を剥き出しにする自分。この自己の矛盾と葛藤は、共同体幻想とか自己批判とかという表現で当時は語られていたが、今読んでみるとひたすら暗くて鬱になるだけだ。

2010/10/13

風に吹かれて

「五族協和」の夢破れシベリヤ流刑を経て帰国した主人公は、混血孤児保護施設を運営してきた。新聞社主催の福祉事業団賞を受賞したとき、「なぜ涙を流したのか。」(P5)。自壊ともみえるその後の堕落していく行為を、戦中戦後の堕落した日本が裁けるのか、という痛切な問題を提示して小説は終わる。主人公の、そこまで行ってしまうのかと、読んでいて胸が痛くなるような行いは、主人公の心から消えることのない虚しさの表出だったのだろう。高橋和己の書き尽くす力は並みのものではない。作品が提示している問題は今も消えてはいないと思う。

2015/05/05

酒井一途

文庫本にして百六十五頁の中編ながら、高橋和巳の作家性が色濃く出ている。彼は長編でこそ才能を発揮すると誰かに書かれておりその意見には同意するが、この作品も良かった。特に終盤数頁の思索の吐露はやはり物凄い。圧倒される。毎回、彼の作品は最後が圧倒的なのだ。この作品の主人公は何故にそこまで堕ちていくか。共感も追いつかぬほどに自分を追い詰め破滅させていく。行動だけみれば同情の余地はない。しかし、わかるのだ。どうしようもなく潔癖で道徳的・倫理的な人間が、また尊厳高く自分への誇りを持ちそれでいて自己否定的な人間が、何を

2012/10/19

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