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芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

作家
大江健三郎
出版社
新潮社
発売日
1997-08-01
ISBN
9784101126036
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芽むしり仔撃ち (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

何度読んでも、初読のときの感動が薄れることがない。数ある大江作品の中でも、共感度はやはりNo.1だ。大江最初の長編小説なのだが、その世界観は「飼育」のそれを展開させたものであることは明らかだ。全体は常に悲劇的な高揚感に包まれながら、しかも強固な抒情に溢れている。ここには、子供であることの喜びと哀しみが、そしていかんともしがたいやるせなさとが、小説世界の閉塞感とともに読者に迫ってくる。「僕」の語りのスタイルと、そして何よりも弟を配したことで、感情世界は一層立体的なものとなり、エンディングの余韻とを醸成する。

2014/08/29

まふ

大江健三郎追悼読書。久しぶりに読んだが、今更ながらこの作品の「完成度」の高さに恐れ入った。四国の山中、戦時中という舞台設定、「感化院の疎開少年達」「僕」「弟」「南」「李」「少女」「脱走兵」「村長」などの個々の人物設定とその的確な描写、疫病という得体の知れないものへの恐怖感等々、多くの小説的要素が的確に取り込まれ、「大江らしいクセ」を抑えたムダのない簡潔な文体の中できびきびと描かれる。ひょっとすると、この一書で彼の全仕事がかなりの割合で表現できているのではないかとさえ思わしめる「名著」である。

2023/05/07

遥かなる想い

大江健三郎の初期作品集。村人達が感化院の子供達にする理不尽な仕打ち、不条理な世界の ようなものが描かれている。後年の難解さは まだなく、大江健三郎にしては、読みやすいとは思うが、緊張して読んだわりに、感動することはなかった。いったい何を描こうとしたのだろうか。

2010/06/19

mukimi

戦争、飢餓、疫病のもとで、身体が肉欲が喜怒哀楽が限界まであらゆる方向へむけ振り切れている。筆者は簡単に登場人物に救いを差し伸べないからこそ、描かれる無垢な生命の煌めきがなまめかしく心に刺さり、その対比としての大人の残酷さや絶望がよりくっきり輪郭を現す。ほんの数日の話で先が気になりどんどん読み進めてしまうから、私の心も暴風雨の中全力疾走した後みたいに大きく揺さぶれてずっしり重い。破滅へ繋がる道であっても自分の意志を貫くことは英雄的ではあるがその先に悲劇しか見えてこないのは私が大人になり過ぎたのか。

2023/10/05

hit4papa

戦時中、山中の村に疎開してきた感化院の少年たち。村には折しも死に至る疫病の蔓延する兆しが。ある夜、疫病を恐れた村人たちは、少年たちを置き去りにし、村の出入り口を閉鎖してしまうのでした…。罪を犯し、親から遺棄された少年たちが、望んでいた自由を手に入れたのは、死の気配が漂う無人の村。しかし、少年たちが築いた束の間の王国での日常は、発病者が出たことで崩壊し始めて…という展開です。母の死体の側で取り残されていた少女、居残った朝鮮人の少年、彼に匿われていた脱走兵を交え、陰々滅々の日々が描かれます。読み応えアリです。

2023/01/10

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