燃えあがる緑の木〈第3部〉大いなる日に (新潮文庫)
燃えあがる緑の木〈第3部〉大いなる日に (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
3部作の完結編。小説を読み終わって、これほどの感動に身体が震えたのは実にいつ以来だろう。本編の主人公、ギー兄さんは自分自身を一貫して「繋ぐ者」と自覚していた。すなわち、ヨハネの果たした役割である。しかし、その最後はあたかもイエスのごときものであった。終章はこうなるしかないという終わり方だが、それもまた予言が実現したかのごとくである。物語の全体もまた、サッチャンによって語られたいわば福音書としての体裁を持っていた。すなわち、何度も何読み返されることによって、常に新たな意味が付与される物語がこれなのだ。
2012/12/25
かみぶくろ
深く静かな感動を得られた。ここまでじっくりと文学を堪能できたのは久しぶり。いずれまた再読したい、自分の読書歴に深く刻まれそうな一冊。
2019/11/10
燃えつきた棒
♫〜 I don't know how t o read this book 〜♫ (ミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」《 I Don't Know How To Love Him 》(歌:イヴォンヌ・エリマン)の節で) https://youtu.be/Z1xrCXNmPSw 今、3冊の文庫本を読み終えて、僕にはたった一つの愛も、祈りも、怒りさえも感じられない。
2020/03/09
ちぇけら
転換や転落とその後の《性的な儀礼》を経たサッチャンは、暗夜につつまれたひとびとが、それぞれの道でそれぞれの救い主に対して集中し・祈るという方向へとすすんでゆく(「神」というものを仮定するならば、その「神」によって方向づけられる)のを体感する。投げつけられた石々によりギー兄さんの受けた犠牲がもたらした大いなる祈りを背に、ひとびとは未来の光を目指してあるき出す大団円。「自分らの酷たらしさを自覚し、自分らの罪を生きていくほかにはないと思う。そしてその罪の償いをしてくれるのは、あの人なのだ。Hallelu!」
2019/12/15
❁Lei❁
ギー兄さんの襲撃の報告を受け、サッチャンは彼の介助役として教会の中心に戻ります。しかし教会の規模や性質は大きく変化していました。内部分裂は広がるばかり、ギー兄さんの手にも負えないほど教会の勢いは増し、暴走が加速してゆきます。外部からの攻撃や糾弾も激しくなり、かつての小さく静かな教会の姿はもはや無いのでした。読後、ものすごいものを読んだなあという心地よい疲労を感じました。重層的な詩の引用、魂についての形而上的な議論など、一度ではなかなか飲み込めないけれど深く考えたいことが盛りだくさんでした。
2022/11/25
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