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パニック・裸の王様 (新潮文庫)

パニック・裸の王様 (新潮文庫)

パニック・裸の王様 (新潮文庫)

作家
開高健
出版社
新潮社
発売日
1960-06-28
ISBN
9784101128016
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ジャンル

パニック・裸の王様 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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遥かなる想い

第38回(1957年)芥川賞。 太郎という、決して 人物を描かない子供との 交流を通して、対比的に 大人世界の狡猾さ等を描く。 本作は 大江健三郎の「死者の奢り」と受賞を 争ったらしいが、落ち着いた構成は確かに 安定感を感じる..大田夫人の息子への 戸惑い、父の息子への無関心さは 現代にも 繋がるテーマであるように思う。 「裸の王様」は自分の間違いに 気がついたのだろうか..ひどく余韻の残る 終わり方だった。

2017/06/30

こーた

「パニック」。カミュ『ペスト』か、ヒッチコック『鳥』か。寓話だから如何ようにも読める。かつては戦争を、いまならパンデミックを想いながら、自然と人間の描写に圧倒される。寓意を支えるのは徹底したリアリズムだ。「巨人と玩具」。資本主義の末路を、高度経済成長のはじまる以前に予感する。どん詰まりに立たされたいま、どうしたらいいかも示してくれたらよかったのに。子どもという未来を喰いものにしてはならないのは「裸の王様」にもあらわれている。型にはめると生きやすい。でも、退屈だ。自由って難しい。それは人生も、小説でも。

2021/02/07

ヴェネツィア

第38回(1957年下半期)芥川賞受賞作。この時は、大江健三郎「死者の奢り」とともに候補作となり、選考委員の間でも意見が割れたが、結果的に「裸の王様」が受賞。なお、大江は第39回「飼育」で受賞している。さて、その「裸の王様」だが、よくできた小説ではあるものの、今読むと観念的に過ぎる欠陥が目に付かないでもない。つまり、万事に作り込み過ぎているという印象を拭えないのだ。開高健といえば、後年は例えば「オーパ!」に代表されるような、行動派の作家として他には類を見ない作風を誇った。別人のように変貌を遂げたのだろう。

2014/04/01

藤月はな(灯れ松明の火)

「パニック」は下らない人間の責任転嫁に巻き込まれた俊介氏に「お疲れ様」と肩を叩いてやりたくなります。そんな人間達ばかりだと愛想を尽かしても人間を止めようとしてもおかしくない。それでも「人間のむれにもどるしかしかたないじゃないか」という諦観を持つことで下らない世の中でも生きていける。虚しさもあるかもしれないが、祈りも篭った開き直りだと感じらずにいられない。「裸の王様」は大人(特に親)の利己心・偽善と悪意をオブラートに包んだ当てこすり、見栄にうんざりさせられた子供なら、最後に爽快さで天を仰ぐ作品だと思う。

2016/12/05

hit4papa

「裸の王様」は中学の教科書に載っていたのを思い出しました。あらためて読んでみると、中坊向きじゃありませんね。当時感じた孤独な少年と絵画教室の先生との心の交流という美談とは違って、人間のどろどろとした部分が垣間見えます。大量発生した鼠のために町中が混乱に陥る「パニック」も同様、権力とか権威に如何ともしがたい苛立ちを覚えてしまいました。サントリー宣伝部にいた著者ならではの「巨人と玩具」、始皇帝の圧政に翻弄される人々「流亡記」も、抗しきれないものの前で現実を受け入れる様は類似してると言えますかね。【芥川賞】

2017/09/19

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