日本三文オペラ (新潮文庫)
ジャンル
日本三文オペラ (新潮文庫) / 感想・レビュー
NAO
戦後、大阪の焼け跡で旧陸軍砲兵工廠跡の屑鉄を盗んで生計を立てているアパッチ族の生きざまを描く。頭が泥棒行為を正当化する理屈は、もちろん通るはずのないものなのだが、妙に的を射て現状を見事に揶揄っている。ぎりぎりのところで生きているアウトローたちの集団の中にある猥雑さ、むき出しのエネルギー、ひとつのことのみに集中する一途な生き方のすさまじさが圧倒的、しかも繊細な筆力で描かれている。
2019/05/27
Shoji
昭和34年に上梓された本である。 大阪のジャンジャン横丁で路上生活をしていた主人公は、砲兵工廠跡からクズ鉄を盗むことを生業とする廃品回収業へと流れる。 生活は、醜悪、猥雑、無秩序、、、全てが最下層。 人間の最も基本的な活動である食べること、食べるためにすべきことに凄まじい執着を見せる。 開高健さんは、食べる臓物の臭い、汚染された運河の臭い、生活者の体臭、すえた部落の臭いまで再現してみせる。 開高健さんはこの物語で「生きることとは何か」を問いかけているような気がしてならない。
2016/07/06
蘭奢待
開高健の小説作品は久しぶり。とてつもなく面白い。氏のネイティブな大阪弁がとても活きている。戦後、高度成長期にさしかかろうという時期の大阪。ニコヨンとか、セキフェとか、レプラとか、説明なしに出てくる大阪弁。いちいちネット検索する楽しさ。 旧陸軍の巨大な砲兵工廠が大阪城付近にあったのも初めて知る。廃墟となった工場の金属を掘り起こし生活の糧とする部落の住民。コテコテの大阪弁、鶴橋の七輪で焼くモツの煙、どんぶりで飲むマッコリや焼酎。たくましく生きる部落の民たち。当時の大阪の活力を感じた。名作。
2023/06/24
そうたそ
★★☆☆☆ アパッチ族ときくと、小松左京「日本アパッチ族」ばかりが思い出される。大阪の旧陸軍工廠の広大な敷地に転がる鉄材等に目をつけた泥棒集団アパッチ族たちを描く物語。この喧騒とした感じが大阪ならではのものと思う。発表された当時はまだ社会にもその面影が多少はあったのかもしれないこの作品も、今となっては遠い過去のようなものとなった。この喧騒とせせこましさがいいとは思わないが、この作品全体を貫くような生の力強さは圧巻。ただどうしても開高健の文章が自分には苦手に感じられる。何作か読んだがどうも慣れない。
2016/07/04
reo
大阪造兵廠跡地から、鉄くずなどを回収し生計を立てる通称アパッチ族と、官憲との頭と体を使った鬩ぎ合い。これが無茶苦茶おもろい。彼らの食いもんやがフクスケの歓迎にあたってボスのキムが「えらいさしでがましいが、ひとつここはわいに奢らせてもらいまひよ」洗面器やバケツのなかに今には湯気がたつかと思えるほど新鮮な血と分泌物にまみれた牛の内臓が溢れていた。この日はほぼ牛一頭分の、食道から肛門に及ぶ内臓一式。ないのは角と皮と骨と普通の肉だけ。今では殆ど死語となった”ニコヨン””ルンペン”などの言葉が飛び交う。臨場感おま!
2020/11/09
感想・レビューをもっと見る