文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫 や 6-12)
文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫 や 6-12) / 感想・レビュー
佐島楓
復刊してくださってありがたい作品集。この「第三の新人」と呼ばれた世代の方々が戦時中と戦後、両方を考察できる最後の方なのだと思うと、言葉のひとつひとつが重い。
2016/03/15
みや
一時代を共にし、先立っていった文士たちを語る晩年のエッセイ・対談集。梅崎春生、島尾敏雄、吉行淳之介、遠藤周作…。濃厚な交際があったからこそ、喪失感の大きさは計り知れないが、知性とユーモア溢れる冷静な筆致や発言は安岡氏ならでは。老境に入ってから洗礼を受けることで死を飼い馴らすことはできたのであろうか。図らずも、「老い」や「死の受容」ということを考えさせられる。
2019/09/23
散歩中
吉行淳之介、遠藤周作、島尾敏雄などの友を見送り、「何度喧嘩して離れていても、作家の友情には生別はなく、死別しかない」と言う。晩年のユーモラスでなんとも言えない柔らかい作風。若い時の作品しか読んでいないが、吉行淳之介と一番親しかったのかな。
2016/06/10
はるたろうQQ
同じ年代でも、否応なく体験した戦争との絡み合い方でかなり違ってくる。安岡の悪い仲間だった古山高麗雄は一兵卒として従軍し九死に一生を得たが、なかなか小説を書くことはなかった。一旦書き始めると戦争体験を執拗に書き続けた。島尾敏雄も結局夫婦共々戦争中の体験から離れることができずにいたような気がする。ただレトリックを駆使した華麗な戦争小説の大岡昇平とは違い、己の経験にあくまでも固執する。この点で、戦争に引っ張りまわされないが、病気で絶望的な環境にいた安岡、吉行、遠藤たちの自分の内面や経験に沈潜する点と同じである。
2018/04/02
ナツメッグ☆
第一次戦後派、第二次戦後派に比べると病気がちで脆弱な印象の「第三の新人たち」だが、居直りに近い感じでかえって存在を強く主張することにつながっている。声高に主張することなく日常のこまごましたところから、人間存在の深淵に迫ろうという気概さえほの感じる。それに遠藤周作、安岡章太郎の「落第生っぽさ」身近に感じられる。吉行淳之介の村上春樹は竜胆寺雄、島田雅彦は吉行エイスケに似ているという指摘もうなずける。
2016/02/25
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