紀ノ川 (新潮文庫)
紀ノ川 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
有吉佐和子は初読。まずは代表作とおぼしき本書から。紀ノ川を表象のシンボルとして明治から昭和にいたる時の流れと、真谷一族の流れを描き出した、なかなかに流麗な小説。三代にわたる女性たちを巡る表現は、ふと谷崎の『細雪』を想起させる。小説全体の主人公は初代の花だが、他の二人もなかなかに魅力的だ。好悪は分かれるだろうが私の好みでは、2代目の文緒に魅かれる。花は、旧時代の「家」に拘泥するのだが、真谷家を継承するのは、まぎれもなく女たちである。それに比べると、当主の政策はともかく男たちの影は遥かに薄いのである。
2019/02/27
小梅
有吉佐和子は美しい女性を書かせたら抜群だ 三代の女性達を其々が魅力的である 読了日が不明になっていた為に登録し直しました。
2018/02/02
榊原 香織
紀州女3代記。 風土に根差した小説、て、地味目だけれどしっとり面白い。2代目は大正デモクラシーの風に吹かれ、海外生活、戦争、と派手目。 さすが名作
2024/05/02
NAO
九度山の地主の家に生まれた花を中心に、旧家の繁栄から戦後の没落まで、女系3代を描いた作品。家は、いざというとき自分の拠り所となる場所、そこに帰属するものにとっての安らぎの場所であり、最後の砦である。そして、それを守っているのは実は男ではなく女なのだと作者はいう。夫の出世のために身上を潰しながらもたくましく家を守り、戦後の家の崩壊とともに消えていった花は、没落地主階級の最後の美しい「花」だった。
2024/02/07
たか
祖母・母・娘の女三代小説と言えば、桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』などがあるが、本書が一番硬質で、しっかりと語られている。 悠々と流れる紀ノ川のように逞しく生きる三人の女性たち。明治、大正、昭和と移り変わる時代に飲まれることなく激動の日々を生き抜いてゆく。 紀ノ川の流れが象徴的なイメージとなり、同じ血の通う三人の女の同質な部分もまた色濃く描かれてる。この対照が本作の大きな魅力ではないか。 最後は、ふと紀ノ川に会いに行きたくなる、そんな話だった。B評価
2020/09/22
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