一の糸 (新潮文庫)
一の糸 (新潮文庫) / 感想・レビュー
鉄之助
吉田修一の『国宝』と併読していたので、より一層、感動が深かった。こちらは文楽で『国宝』は歌舞伎、の違いはあるが、伝統芸に生きる「執念」は共通するような気がした。義太夫三味線に命を懸ける主人公は、「文楽は間の芸術と思っていたが、”魔”の芸術だ」と思い至る。「魔に取り憑かれた人たち」の物語だった。演奏している途中で「一の糸が切れた時には、三味線(奏者)はその場で舌嚙んで死ななならんのやで」。さすが、有吉佐和子! この覚悟のセリフ回しに感動した。
2021/10/16
honyomuhito
主人公の二人は人生の達人だと思うのだ。あくまでも自分本位なのである。しかしこうした(自分の)目的のためなら(一般的な)手段を選ばない人々がいたから、伝統芸能の道は続いてきたのではないかと思ってしまう。余人がしのごの言う余地はないのである。茜の最後の台詞が、最初ピンとこなかったのである。しかし、レビューを書いていて気がついた。茜にとって、自分の生涯を賭けて作った「露沢徳兵衛」と言う作品の完成した瞬間に出た台詞があれだったのではないか。https://chirakattahondana.com/一の糸/
2020/02/03
カピバラ
茜の成長記だったなぁ…と思います。おぼこな娘から、9人の子供を育て、昔の愛人を皮肉交じりに叩き出せる肝っ玉女性に成長していきましたな〜。徳兵衛に恋した茜の生き様は素敵でした。女性の添い遂げる強さ・ひたむきさがありました。
2016/04/22
Shoji
有吉佐和子さんを堪能した。 主人公は文楽の技芸員の清太郎と妻の茜。芸の世界のお話。 わがままで血気盛んで世間知らずの若い頃、苦労に苦労を重ねる結婚生活、そして人間として円熟する老年期。 この本を読む私の心情の変化は、「バカタレ→頑張れ→ありがとう」。そう、最後はありがとう。 有吉佐和子さんの書く人間模様好きだな。
2016/05/31
カーミン
裕福な商家に生まれ育った茜は、文楽の三味線弾き清太郎の一の糸に魅せられ、いつしかその想いは清太郎への恋心となっていく。茜18歳の冬、大垣の宿でその想いを遂げるが、清太郎には妻も子もあった。やがて年は経ち、中年となった茜は、ひょんなことから徳兵衛の名跡を継いだ清太郎と再会する。芸一筋に生きる男のすさまじさとそれを支える女の哀しさが描かれています。
2017/12/07
感想・レビューをもっと見る