針女 (新潮文庫 あ 5-17)
針女 (新潮文庫 あ 5-17) / 感想・レビュー
ミカママ
読みながら何度も同じ著者の書いた『非色』を思う。戦後をたくましく生きた女性の物語。あの戦争は大勢の人を変えてしまった。亡くなった人はもちろん生き残った人までも。意地悪な姑を蹴散らしても、初恋の相手・弘一といっしょになって欲しかったが、まさかのラスト。身の回りをこぎれいに整えつつお針を必死に動かす清子を見て、わたしももっときちんと暮らしたい…なんてことを思ってみたりもした。
2022/11/12
Smileえっちゃん
以前読んだ本。戦中から戦後の時代が描かれている。主人公の清子は幼い頃からの孤児で、仕立て屋の三五郎夫妻のもとで針子として仕込まれた。針を踏んだことで足に障害を持つことになる。夫妻の帝大生の息子弘一への片思い、出兵、残された「青春の遺書」を胸に針仕事に打ち込む。空襲、食料難、やがて弘一は復員してきたが・・・戦中戦後の背景があり、孤児、障害を持つゆえなのか、地味さを感じる物語でした。
ソーダポップ
針女と書いて「しんみょう」と読む。要するにお針子さんの事だ。太平洋戦争の悲劇を女性の視点から描いた小説でなかなか上手い。主人公清子は職人の叔父に幼い頃から仕込まれて針を持ち、地味に真面目に控えめに生きるタイプでだが、ただ耐えるだけの女ではなく「芯が強い」というところがポイント。清子の打たれ強さが良い味になっていて、物語は陰鬱なのに、それほど悲惨なイメージはないのだ。筋書きとしては酷い話しで、ハッピーエンドではないけど「これからも強く生きていくのだろうな」と思えるあたりに救があるので意外と後味は悪くなかった
2023/04/22
紅香@本購入まであと9冊
『針先が音をたてるのは布の糸を切るか傷をつけるかしている証拠だ。糸は織り込まれなくちゃいけない』針子の清子を通して見た戦争。不運な事故から負い目を負った女と博識で戦地に飛ばされ、帰還した男。千人針。学徒出陣。配給。闇市。前線の反対の言葉銃後。敗戦で一変した世界。まざまざと見せつけられた。清子がこの不協和音から抜け出すために出した答えは、きっと世界を音も立たず、傷付けず、自分を上手く織り込むこと。両頬を打たれた気がした。この年代の女流作家は魂が違う。こういう作品を埋もれさせたくはない。背筋が伸びる一冊。
2021/01/31
Shimaneko
時代とはいえ、いろいろ酷すぎて言葉を失う。終盤の清子の悟りも、「は?なんで?」状態で置いてけぼり。いや、それでようやく目が覚めて前を向けたのなら、何よりではあるのだけれど。彼女が非難がましく「あの戦争で死ななかった」側と線を引く河野夫人や世津子の逞しさを好ましく思うだけに、お幸と弘一母子の、清子に対する理不尽な仕打ちが腹立たしくて悶絶。ああ、疲れた。(DAISYデータ編集本)
2023/11/26
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