恍惚の人 (新潮文庫)
恍惚の人 (新潮文庫) / 感想・レビュー
青乃108号
1972年に出版され、一躍ベストセラーとなった有名作。介護保険制度のなかった時代の老人介護問題を扱った作品だが、古さを感じさせない著者の筆致に一気に読まされてしまった。家庭内で認知症の進んだ義父の介護を、最後までやり遂げた一主婦の奮闘記。夫はあくまで他人事の様に非協力的、息子は大事な受験を控えているため一人で介護の全てを抱え込み彼女も家族も崩壊寸前だ。主婦は思う、いつかは自分自身もこの様に老いる日が来る。そうなのだ。現在の65歳以上人口は、3,589万人となり、高齢化率も28.4%となった。俺ももうじき。
2024/05/30
遥かなる想い
昭和の平凡な家族の風景がのどかである。 老人性痴呆を扱った作品だが、 昭子と 老夫婦との やりとりが昭和らしい。 義母が 亡くなったあとの 義父の振りまいを 昭子の視点で描く。 昭和47年の作品だが、今読んでも 身にしみる、そんな作品だった。
2020/07/17
じいじ
この小説は、50年前の大ベストセラーだったとのこと。いま、読んでも旧さを感じさせない凄い小説です。主人公・恍惚の人・茂造は84歳、明日の我が身だと思って読みました。ある日突然、笑顔が可愛いくて家族から慕われているお婆ちゃんが倒れ、逝ってしまいます。死ぬ順番が違うだろう、と思いました。この物語、長男の嫁を中心に舅・姑・小姑との微妙な関係が、丁寧に描かれていて面白いです。読み終えて、81歳の私を支えてくれる人たちに、この茂造爺さんのように余計な負担をかけないで、残りの人生を過ごせたら…、と思いました。
2022/06/12
まさきち
昭和40年代、まだ認知症がよく理解されず、耄碌と呼ばれ精神病として扱われていた頃の話。呆けた舅・茂造わ甲斐甲斐しく世話する嫁・昭子の気持ちや考えの変化や夫・信利や息子・敏の思惑、更には親戚や周囲との軋轢や温度差が丁寧に描かれていて非常に楽しめた一冊。風俗や生活習慣の現在との違いを味わえるのに、老人を取り囲む人々の気持ちや考えはそう変わらないのだなと感じさせられながら読了です。
2020/03/13
ゴンゾウ@新潮部
親の介護が現実となり、自分の老いも感じる年代になった身としてはとても人事ではない作品でした。軽い痴呆から始まり徘徊を繰り返す。おとなしくなったと思ったら壊れていく。とても考えさせらました。【新潮文庫の100冊 2024】
2024/07/20
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