海猫(上) (新潮文庫)
海猫(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
第10回(2003年度)島清恋愛文学賞受賞作。他の年度も受賞者の顔ぶれを見ると、主として大人の恋愛文学が好まれるようだ。本書も、もちろんまぎれもなく大人の恋愛を描いたもの。構造の上からは、いくつかの対立軸が目につく。異国風の都市である函館と、そこから山を一つ隔てた昆布漁の南茅部。兄と弟、また姉と弟等。また、この小説では肉体、ことに性が重要なウエイトを占めている。おそらく、それは谷村志穂の小説の特徴ではないかと思う。そして、女たちの生のひたむきさと、一方の男たちの杜撰さとが実によく書けていると思う。
2017/12/04
Lara
20歳そこそこで、漁師、邦一に嫁いだ、薫。北海道の海、山の自然に囲まれた漁村で生活する人たち、昭和30年代が始まったばかり。薫、邦一、その兄弟も若い。性描写が生々しく多く描かれるが、若さ故か。仲睦まじい夫婦にも、亀裂が入る。薫自身も夫以外と恋仲になる。激しい恋愛模様が描かれる。さて、下巻が楽しみ。
2023/06/15
AICHAN
図書館本。谷村志穂初読み。ロシア系混血の美しい娘が漁師の家に嫁ぐ。荒々しい求愛に次第に女に目覚めていく娘。しかし、あるときから違和感が…。かなり直截的で大胆な性愛描写があったりストーリーが昼メロ的で泥沼に入っていくが、決して猥褻でも粗雑でもない。おそらくは著者の丁寧な人物描写と洗練された文章によるのだろう。確か伊東美咲主演で映画かドラマになっているはず。観てみたくなった。ドロドロと下巻に突入!
2019/05/05
アッキ@道央民
【北海道出身の作家を読むコミュニティ】道南の南茅部や函館が舞台。ロシア人の血をひく薫が、昆布漁師の邦一の元に嫁ぐ所から始まる。娘を産んで、幸せに暮らしていたはずが、夫の邦一がゲガをして入院する頃かギクシャクし始め、義弟の広次とひかれあう。道南の漁師町の情景や、漁師達の生活も丹念に描かれていますね。果たしてこの恋の行方は?と気になりつつ下巻に進みます。
2014/11/15
カムイ
初読みの作家さんです、函館を舞台にしてるので興味津々であった、ストーリーはドロドロの昼ドラですが嫌いじゃありません、のめり込むくらいに読んだ厚さの割にはサクサクといけた、物語は昭和33年函館、南茅部の漁師町に嫁ぐ薫、ロシアとの混血により透き通る様な肌と青い目、そして愛浴に溺れる、正に王道昼ドラ、決して貶していません(笑)そしてバカな男達、姑のタミ漁師一家に取り憑かれた亡霊の様な存在である、函館の町並みも鮮烈に描かれてその当時の風俗もよく書かれていた、下巻も楽しである。
2018/06/09
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