男子の本懐 (新潮文庫)
男子の本懐 (新潮文庫) / 感想・レビュー
優希
経済誌において最も鮮明なことが「金解禁」。浜口雄幸と井上準之助という正反対の2人が遂行したのが興味深いところです。政治・経済史に苦手意識があるので、この手の本は殆ど読みませんが、これから少しずつ読んでみるのも面白いかとぼんやり考えました。
2023/03/20
shincha
利他の精神の権化のふたり。浜口雄幸と井上準之助。表現の仕方と手法は真逆の2人だが、国の為に私を捨て、本気で日本の未来の為に働いた方々。余の存在が君国の為に有害若しくは不利であると…正々堂々合法的の手段に依ってその目的を達すべき…国法を犯し公安をみだるが如き暴挙敢えてするは、動悸のいかんに拘らず断じて許すべからずところである…残念ながら国の事を考え抜き、実行し続けた2人は凶弾に倒れる事になった。現在の政治家達の何人が彼等の境地で仕事をしているだろうか…。
2022/05/23
Book & Travel
TVの歴史番組で浜口雄幸を取り上げていたのを見て以来、気になっていた小説。昭和の初め、金解禁と緊縮財政と軍縮を、首相と蔵相として推し進めた浜口雄幸と井上準之助が主人公。「浜口の静、井上の動」と評された対照的な二人だが、お互いを認め合い、日本経済立直しのために共に信じた政策を進め、そして共に凶弾に倒れる。城山氏の代表作の1つだけあって、前半の二人の半生から面白く引き込まれる。軍部や枢密院の圧力の中、根回しを嫌い、専門知識に基づいた哲学を正面から押し通す二人の姿は勇敢で格好よく、その生き方に心熱くなった。
2017/06/30
まつうら
昭和初期の著名な財政家といえば、まずは高橋是清があげられる。多くの作品で取り上げられるほどの功績を成した人だ。しかし、この作品で語られる井上準之助は、高橋以上の偉業を成し遂げた人物ではないだろうか。景気後退で税収が減る局面で、国債発行に頼らない緊縮財政を運営できたのは、歴代蔵相の中で井上だけだと思う。一方の高橋は、井上とは逆で国債を活用した積極財政派と言える。しかし、国債依存が常態化している現在の財政運営の根源が高橋にあるとするなら、いまこそ井上の財政手腕が見直されるべきではないだろうか。
2022/02/20
あきあかね
「青山墓地東三条。木立の中に、死後も呼び合うように、盟友二人の墓は、仲良く並んで立っている。位階勲等などを麗々しく記した周辺の墓碑たちとちがい、二人の墓碑には、「浜口雄幸之墓」「井上準之助之墓」と、ただ俗名だけが書かれている。よく似た墓である。」 昭和のはじめ、日本経済を立て直すため、緊縮財政と金輸出解禁に命を懸けた二人の男の物語。 金の自由な動きを認めることで通貨が安定し、経済の安定装置となる「金本位制」は、火の利用と並ぶ人類の英知とも評される。第一次世界大戦の非常事態下では世界各国は先行きの不安に⇒
2020/05/10
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