冬の派閥 (新潮文庫)
冬の派閥 (新潮文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
幕末の尾張藩の勤王・佐幕の対立が生み出した血の粛清劇〈青松葉事件〉を描く。 このことがやがて、明治維新後、尾張藩士の北海道移住を まねくことになるが・・城山三郎が描く徳川慶勝が リンとしており、好感を覚える。 かつての指導者には「運命を受け入れる」素直さのようなものが あり、潔い。時代の転換期には、こういう潔い先人たちが 多かったのだろうか。
2014/05/06
chantal(シャンタール)
三万石の小さな支藩から御三家筆頭の尾張藩主となった徳川慶勝。とにかく律義で「熟察」を旨とする彼のリーダーシップは平時には良かったのだろうが、あの時代ではただ勢いや権謀に翻弄されるだけ。とにかく「逃げるが勝ち」の従兄弟、慶喜の尻拭いを押し付けられるだけ、ずっと勤皇の立場でありながら維新後も尾張藩出身者で政界に活躍する人はとても少数だった。実弟の松平容保、桑名藩主定敬も翻弄され続けた形。気の毒でしょうがない。尾張にも勤皇対佐幕の争いがあり、その善後策で北海道の開拓に行かされた人たちの過酷さにも胸が詰まった。
2020/03/04
さつき
最近『葵の残葉』を読み幕末の尾張の窮状は承知しているつもりだったけど、想定以上に重たい読後感です。読み終えてしばらく放心状態になりました。次々変わる局面でことごとく慶喜の尻拭いをさせられる慶勝にも同情しますが、何より維新後の開拓話しが辛い。雪に羆にバッタ…困難ばかりが降り掛かる中で辛抱を重ねた人々が大勢いたこと。忘れません。
2020/08/26
kawa
著者珍し?幕末ものだが、またも知らなかった悲劇の存在にびっくり。主人公は徳川御三家筆頭の尾張藩主・徳川慶勝。生真面目な勤王派であるがゆえに、いとこである最後の将軍・慶喜に振り回され、さらには、薩長側公家・岩倉らの謀略により三重臣十一士処刑という「青葉松事件」を生来させられる。慶勝の目から見える風景が従来の幕末ものと異なり興味深くも刺激的だ。ある意味「事件」の勝者でもある尾張藩勤王派・金鉄組の面々、維新後の北海道・八雲での開拓生活の苦闘も読みどころ。慶勝・慶喜好対照な指導者振り。その在り方も考えさせられる。
2020/03/07
KEI
幕末期を尾張藩からの視点でみた物語。岩倉具視、徳川慶喜、松平春獄以外は馴染みがない主要登場人物であるが、幕末物として新鮮だった。司馬遼太郎の小説を読んでいて、鳥羽伏見の戦い以後、官軍に急に尾張藩が連なっていることが違和感があったが、経緯がようやくわかりました。明治維新後、尾張藩の北海道開拓の話が続き、物語が深まった気がする。オススメです。
2020/09/18
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