そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)
そうか、もう君はいないのか (新潮文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
いつもすぐ傍にいてくれた 最愛の人を喪った哀しみ。 城山三郎が亡き妻容子に おくる回想記の形をとる ラブレターである。 読んでいて特に心が痛い のは、この幸せな時間が もう思い出の中にしか 来ないことを知っているからだろうか。 昭和26年の出逢いから 始まる二人の思い出は、 素直に心にしみわたり、 逆に哀しさが増幅して いく。その時に向かって 過ごした日々は濃密な 幸せな時間だったと思いたい。
2015/11/23
ykmmr (^_^)
歴史小説や経済小説で、建設的に筆跡を残しながらも、何処か描かれている人物に『想い』も馳せながら作品にしている城山さんであるが、これは先に旅立った奥様への『想い』そのもの。名古屋で出会い、「空から天使が降りた。」と表現される『運命』の出会い。一回、交際を断られて距離が出来るも、諦めずにいたら、自然と距離が縮まって…。恋が成熟。オトコの一途な人が陥る様な大恋愛をし、実らせた若き城山さん。結婚後は娘2人を授かるが、その娘とのやりとりと、それを作った奥様流『子育て』が語られる。
2022/11/24
めろんラブ
妻に先立たれた後、心に去来する想いをストレートに記した、この上ない”愛妻日記”と感じた。寂寥感漂うタイトルが秀逸。ユーモアを交え淡々と紡がれる御夫妻の歴史に少々当てられつつ、このような強い信頼関係を築いてこられたことに心底敬服した。連れ添うこと、これいかにも難儀なりと歯噛みの日々を送る向きには、本書の醸すユートピア感は最早ファンタジーの域かと。妻恋しの絶唱が胸に刺さりつつ、さて容子夫人の真意や如何にと思う我が底意地の悪さよ。
2015/03/04
パフちゃん@かのん変更
なんて素敵なご夫婦。1927年生まれの城山さんだが、その頃には珍しい恋愛結婚。それも臨時休館の図書館の前で『間違って、天から妖精が落ちてきた感じ』一度しか会っていない彼女をゆくゆくは伴侶にと思ったが、彼女はその時高校生で彼女の父親の猛反対により別れた。が、1年後ダンスホールで出会い、交際復活。絵にかいたような恋愛ストーリーですね。文士の妻となった彼女は天真爛漫な性格で、一度もケンカらしいケンカをしたことがない。様々なエピソードが彼女の人柄を表している。城山さんはこの人と結婚できて本当に幸せな人生だった。
2014/07/12
新地学@児童書病発動中
作家の城山三郎氏が亡き妻への想いを描いたエッセイ。涙なしに読むことはできない。骨太な言葉の端々からこぼれ落ちてくる慕情の気持ちが切ない。親しい者の死は簡単に受け入れるものではなく、ここに描かれているように日常の生活の中でこみあげてくる「もう君はいないのか」という喪失感なのだろう。お転婆な容子さんの肖像が魅力的で、城山氏と好対照だと思った。最期に息子さんと別れる時の行動に、容子さんの明るさと優しさが凝縮されているような気がした。
2016/05/24
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