柳橋物語・むかしも今も (新潮文庫)
柳橋物語・むかしも今も (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
「柳橋物語」が書かれたのは1946(昭和21)年の7月のことであるらしい。太平洋戦争が終結して11か月後である。その頃の東京は一面の焼跡であったと思われる。食糧事情も劣悪であったに違いない。この作品で描かれる元禄の大火は、おそらく元禄11(1698)年に起こり、2万戸にのぼる町屋が焼失した「勅願火事」だろう。これは典型的な「待つ女」を構造の軸としつつ、おせんが運命の変転を受容するにいたる物語である。しかも、その「受容」は最後にはおせんの積極的な意思として選び取られた運命であることに特徴を持つだろう。
2021/07/06
じいじ
〈生きる〉ことの重さをとことん考えさせられた。こんなに悲しく辛い作品は初めてだ。何故、17歳の娘・おせんがこんな残酷な目に合わねばならないのか、途中作者を恨んだ。男への「迎えに来るのを待ってるわ」の一言がおせんの一生の運命を決めることに…。江戸の大火事で九死に一生を得るおせん。炎の中に置き去りにされた乳飲み子との過酷な生活が始まる。人情の温かさとともに他人の妬みや誤解の風評に立ち向かうおせんの意志の強さに驚嘆です。誤解が解けた結末は見事です。悲劇に打ちのめされた気持ちが感動に変わりました。読んでよかった。
2016/09/24
舟江
読書会のために読んだ。柳橋が花街になる100年も前の話。風呂も混浴の時代。近所のお付合いも、これ位濃くないと生活ができなかったのだろう。生活のキビが上手く描かれていた。
2017/01/24
michel
★4.3。初の山本周五郎作品。江戸の人情物語2編。どちらもとても心温まる良作。訥々と話が展開して行くが、自分が江戸時代に入ったように感じた。『柳橋物語』は、とことん芯の強い女の生き様。『むかしも今も』は、とことん真っ正直な男の生き様。どちらもとことん美しい生き様で、胸熱く感動の良ラスト。最近、読友さんのレビューに惹かれているので、山本周五郎作品はまた読んでいきたい!
2017/09/08
Yamazon2030
2016(12)読了下町もの中編二作本当の愛とは何か、考えさせられた。「柳橋物語」おせんの生き方に感動。一言を信じたばかりに不幸を背負うことになるが、最後の場面にこちらが救われたように思えた。柳橋の描写が圧巻。感動で震えた!「いまも昔も」直吉の愚直で誠実な生き方に共感。最後の場面、職場の休憩時間中にの読んでて、涙が出そうになった。
2016/03/11
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