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大炊介始末 (新潮文庫)

大炊介始末 (新潮文庫)

大炊介始末 (新潮文庫)

作家
山本周五郎
出版社
新潮社
発売日
1965-02-02
ISBN
9784101134079
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大炊介始末 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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yoshida

山本周五郎さんの短編集。人情味あり深い余韻を残す作品が詰まっている。「おたふく」でのおしずの暖かさ。おしず姉妹の人を悪く言わない姿に、かけがえのない尊さを感じる。「ひやめし物語」の鷹揚な主人公。利害だけで動かない表裏のなさが素晴らしい。「山椿」での人の信念と更正の光り。最後に訪れる幸せが眩しい。表題作では乱心したかと思われた若君の胸の奥の苦しさ。そして深い想いに心打たれる。「なんの花か薫る」で、僅かな希望に向け健気に生きる女達の姿に対し、手酷く裏切る男の卑劣さの対比が鮮やか。抜群に面白い。魅力的な作品集。

2020/06/20

ふじさん

表題作「大炊介始末」は、自分の出生の秘密を知った大炊介が、狂態を装って藩の衆望を裏切らねばならなかった悲劇を描いた作品で、血の繋がらない養父との父子の情愛や親友こさぶとの交情に心が揺さぶられた。「なんの花か薫る」は、娼妓のお新と若い侍の房之助との恋騒動を描いた作品で、最後に思わぬ展開が待っており心憎い完璧な作品。「落葉の隣り」は、下町物で、おひさと繁次と参吉の微妙な感情の交流と乖離を巧みに描いた秀作。「こんち午の日」は下町の豆腐屋の婿塚次の困難にもめげず健気に家業を守る姿がいい。「よじょう」も読ませる。

2022/05/14

タツ フカガワ

冒頭、武家物の「ひやめし物語」で笑い、次の「山椿」に涙する。表題作に至っては、後半20ページは目がうるうるしっぱなしで電車内読書は要注意。「おたふく」のおしずは、周五郎作品でいちばん好きなヒロイン。同じ長屋で育った男女3人のそれからがほろ苦い「落ち葉の隣り」も忘れがたい一編。と、どの作品も人間愛に溢れる全10話の短編集。10年ぶり4回目の読書ですが、濃密な物語世界は何度読んでも素晴らしい。

2023/11/01

ルカ

選りすぐりの短編10篇を収集。 橋本五郎氏の推薦本だったので手にした。山本周五郎初読みだったが、どの短編も印象に残る素晴らしい作品だった。 「大炊介始末」に胸を熱くし、「こんち午の日」「おたふく」に人情を感じ、「ひやめし物語」にほっこりした。

2022/08/19

kawa

NHKラジオ「朗読」にて取り上げられた「こんち午(うま)の日」が良くて、そちらが収録されている短編集を手に取る。日中から気温の上がらなくて寒い寒いと嘆く今日のような日の夕刻に、燗した日本酒を頂くとしみじみ日本人に生まれて良かったと思う。本作も正にそんな手触り感を満喫できる一作。「ひやめし物語」「ちゃん」「落葉の隣り」など、良くも悪くも日本人のメンタリテイーのど真ん中を射抜く傑作。歳末作家(巻末の「解説」で命名している)恐るべしだ。

2019/12/07

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