おさん (新潮文庫)
おさん (新潮文庫) / 感想・レビュー
じいじ
66頁に凝縮された【おさん】が断然好きだ。切なく哀しい物語だが、面白いし、読み心地がよい。純真で可愛くて男好きする女・おさん。性に陶酔する一途な女の業を描いた著者の筆力が凄い。〈夫婦の情事は空腹を満たすものではない。一生の快楽をともに、お互いを結びつけ合うもの…〉と自覚しながら、おさんの心底を見抜けず逃避した男・参太の揺れ動く気持の描写も見事です。おさんと縒りを戻そうとする参太が女々しくいじらしい。しかし、その男心は理解できる。長編にして読みたい力作。他の9編も粒ぞろいの面白い作品です。お薦めの一冊。
2016/08/13
ケイ
短編集。こんな無欲で自らに厳しい男がいるかと思うが、読んで清々しさと切なさが残る『青竹』。『夕靄の中』思わぬどんでん返しだ。話しかけてくる男の思いやりがいい。女性との話では、女性のタイプが古いのか、自分には女性側の心情が理解できず、今一つ気持ちが入り込まなかった。表題作『おさん』もしかり。ただ沼津からついてくる男の子が、不思議な存在感を醸し出していて良かった。『ちゅう盗(漢字変換できず)』は、芥川の作品のイメージが強く、比べてしまった。芥川のが圧倒的に好き。比べるものではないのだが。。。
2015/01/29
nakanaka
10篇から成る短編集。いやー、良かったです。特に初っ端の「青竹」と最後の「饒舌り過ぎる」が良かったです。「青竹」では、真っすぐで全く欲のない主人公・余吾源七郎の生き方に涙してしまいました。また「饒舌り過ぎる」では、主人公二人の友情に引き込まれました。どの話も男女の仲が肝となっていますが、青春の恋や大人の恋、夫婦の関係などどれをとっても描き方が見事です。私自身の価値観と合う内容が多かった気もします。また「葦は見ていた」と「その木戸を通って」は終わり方が秀逸だと感じました。
2018/01/15
ぶんこ
たまに思い出して読む山本周五郎さんで、苦手な短編集だったのですが、とても良かったです。しみじみと著者の優しさを感じる物語で、どの作品もジンワリエンドと言えるような余韻が残りました。「みずぐるま」「並木河岸」「その木戸を通って」が好みでした。
2018/10/15
優希
じんわりと入っていくような短編集でした。それぞれの物語が味わい深く、何をきっかけとしていながら今日を生きているように感じます。
2021/12/30
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