KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

つゆのひぬま (新潮文庫)

つゆのひぬま (新潮文庫)

つゆのひぬま (新潮文庫)

作家
山本周五郎
出版社
新潮社
発売日
1972-03-01
ISBN
9784101134192
amazonで購入する Kindle版を購入する

つゆのひぬま (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

じいじ

 いいですねぇ、周五郎は。何とも贅沢な短篇集です。どれもいいですが、紙面の関係でお薦めの二篇を紹介します。深川を舞台にした遊女たちの日常を描いた表題作。〈客に惚れることは法度〉の掟を破って客に恋を…。大洪水の夜に女同士の友情が、二人の恋に花を咲かせます。私のお気に入りは【水たたき】です。愛妻に「おまえ浮気してもいいぜ!ただし、俺の気づかないようにな…」の迂闊な一言がとんだ不運を巻き起こす話。その後の男の心の動揺、女の健気な行動や息遣いの描写にぐいぐい引き込まれます。感動の結末は、ご自身でご確認願いたい。

2018/04/26

nakanaka

七編からなる短編集。人一倍おしゃべりな宗兵衛が大活躍する「おしゃべり物語」が一番面白かったです。主人公の宗兵衛は、普段は人を苛立たせるほどに口達者だが実は文武両道で思慮深いという魅力的な人物。また、あまりの饒舌と悪童ぶりから養子先をたらい回しにされるといったことなどがあったものの最終的には藩主の側近まで上り詰めるという痛快な展開に山本周五郎のストーリーテラーぶりが遺憾なく発揮されていると感じました。表題の「つゆのひぬま」は娼家に働く女たちを描いた切ない話。山本周五郎の様々な魅力が詰まった短編集でした。

2022/03/23

優希

平安時代から昭和までと幅広い時代を描いている短編集でした。洒落ているもの、悲恋、狐の化かしなど内容も様々で面白かったです。様々な人間模様があり、それがどのようなことでも作者の愛する眼差しを感じることができました。人情味を感じずにはいられません。結末が読めるにも関わらず、結末そのものは描かれていないような雰囲気に惹かれます。ほんのり心温まる気持ちで読み終えられて、心にじんわりきました。

2015/01/07

のびすけ

9編の短編集。おたふく三部作の2作目「妹の縁談」がお目当て。書かれたのはこちらが後だけど、物語の時系列的には先になる。おしずとおたかの姉妹は自分たちをおたふくと卑下してるけど、その実は明るく愛敬があって結構な器量良し。天然でドジな姉おしずが、妹おたかの幸せのために奔走する。ユーモアと人情に溢れた心温まる一編。その他、「武家草鞋」で老人が伝三郎に自分を見つめ直すことを説いた言葉、「つゆのひぬま」で男女の関係を"露の干ぬまの朝顔"に例えたおひろの言葉が心に響いた。他も良作揃い。

2023/08/19

きょちょ

短編9作。 面白く読めたのは、「おしゃべり物語」。しかし、主人公の真の心情を描いていないので、主人公の実質の人柄がわからないのは不満。 「山女魚」はサスペンス要素があり、最後は若干の感動。 「大納言狐」が実にもったいない。この筋でも良いのかもしれないが、最初の恋文を交換したもの同士の話に徹した方が良かったのではないか? 「武家草履」は、O・ヘンリー的な要素があるが、やや押しつけがましい。 周五郎は、本気で書きたい作品とそうでない作品が、はっきり見えてしまうようだ。 ★★★

2020/04/06

感想・レビューをもっと見る