栄花物語 (新潮文庫)
栄花物語 (新潮文庫) / 感想・レビュー
タツ フカガワ
再読。反田沼の元旗本で戯作者の青山信二郎と、彼の親友で大身旗本に婿入りした藤代保之助、そして田沼意次3人の視点で描かれる濃密な人間ドラマ。賄賂政治の権化として時代小説では悪役の定位賃に座る田沼意次を幕政の改革者という解釈で捉えた内容で、松平定信の造形も革新的です。世評とは真逆の解釈というので思い出すのは『樅ノ木は残った』の原田甲斐。こちらも近々読み直したいものです。
2024/06/08
aponchan
面白かったが重かった。自分の人生を改めて振り返りさせられる。田沼意次のイメージも変わるし、何故そこまで頑張れるのか、頑張っても評価はされない事の難しさは、今にも通じている気がする。 改めて、色々、思うところがある作品だった。
2022/08/25
とみやん📖
田沼父子が活躍した時代に、旗本等下級武士青山、藤代の儚い人生を描いたもの。 通説を逆に捉え直し、かつあがなえない悲運の中で葛藤しながら自分らしく生きるといった点で、著者の代表作「樅の木は~」と共通しているものの、こちらが先の作品のよう。両作品とも、昭和20年代後半の作品なので、敗戦後の価値観の逆転が著者に影響しているのかもしれない。長編ながら展開があり飽きさせない。物悲しいなかに、生きる力強さを感じさせる良作。
2018/02/13
rokubrain
世の中的には賄賂政治家として悪玉と評されてきた田沼意次が、実は善玉だったのではないかと解釈をひっくり返して見せたのが、 山本周五郎のこの小説だった、ということを知った。幕府経済をいかに建て直すか。まちがった善やありもしない道徳を守り本尊として 飼いならされた犬 というのが大衆、 という警句をこの小説で伝えたかったのかもしれない。 古さを感じさせない。むしろ現代にも通じる人間の行動心理が感じられた。 山本周五郎はさすがだな。
2022/09/04
そうたそ
★★★☆☆ 汚れた政治という田沼意次のイメージを覆すようなイメージのもと紡がれる物語。とはいえ、田沼のそういったイメージが蔓延していたのも一昔前のことであり、今では再評価されている。だがそうではなかった当時にこの作品を読んだ人は驚いただろう。ただ本作は田沼を描いた話ではない。あくまで一要素。田沼の統治する時代、様々な運命に翻弄される市井の人々が描かれる。面白いが、色々書きすぎた分、雑多になってしまった感がある。テーマ性という点では今ひとつ。純粋に田沼意次の話を読みたかったかな。
2020/11/01
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