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四日のあやめ (新潮文庫)

四日のあやめ (新潮文庫)

四日のあやめ (新潮文庫)

作家
山本周五郎
出版社
新潮社
発売日
1978-08-29
ISBN
9784101134284
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四日のあやめ (新潮文庫) / 感想・レビュー

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みも

表題作「四日のあやめ」とは「六日のあやめ」の対義語として用いられる。すなわち「遅すぎ」ではなく「早すぎ」つまり未成熟な女性の比喩である。そのひたむきさゆえに夫を窮地に陥れたが、後にそのひたむきさゆえに夫はほだされる。30~50頁程度の短編9篇。何れ甲乙つけ難い珠玉の作品。解説によると昭和20年~36年の17年間に亘る作品集だが、揺らぎなく一貫しているのは人間本位に描かれている点。武士は言うに及ばず女も潔いまでに凛として生きている。作品それぞれの哀切は滋味深く、得も言われぬさざ波となって心の深奥を揺さぶる。

2024/05/28

ふじさん

表題作「四日のあやめ」は、武家では御法度である助太刀の頼みを取り次がなかった妻の行為を巡って、夫婦の絆とは何かを問いかける、夫婦の情愛をメインにした感動的な作品。「貧窮問答」は、将来を約束した女がいて堅実な生活設定を持ったいる中間が、貧乏旗本の不思議な人格にひきつけられ、女と別れてまで彼に奉公しようとする奇妙な絆を描いた作品。「榎物語」は、六年間も待ち続けてきた男と再会した時、女は気づかず、男も素っ気なく別れた。なんとなく不思議な小説。これらが好きな作品だが、「ゆだん大敵」「初夜」等なかなか読ませる。

2024/07/28

じいじ

9話の短篇集、どれも味わい深い逸品揃いです。わたしは武士の「夫婦愛」を描いた表題作【四日のあやめ】が、とりわけ気に入りました。夫婦互いに相手を思いやる心遣いが堪らなく好きです。オレの悪評が続く限りオレは成長してみせる、と大見得を切る夫が一段と頼もしく見えます。読み終えて、もっと読みたいと思う欲が湧きますが、心残りは短篇の良いところかも…。いまの世にも通ずる?夫婦愛を描いたこの短篇、また読みたくなるだろう……。

2022/04/13

優希

切なくてずっしりくる短編集でした。感傷的な雰囲気が漂う珠玉の作品ばかりです。男性の懐が深く、義理と人情があふれているように感じました。純愛物が多いので心にじんわりきます。感傷的な雰囲気が何とも言えずいいですね。

2015/01/08

タツ フカガワ

先日NHK-BSプレミアムの『だれかに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ』を見たら、だれにも話したくないほどの出来だったので11年ぶりに本書所収の「はたし状」を再読。これは婚約した女性が婚儀を破談にして親友に嫁ぐという、破談された男の苦悩の物語。怒りや絶望、不信や疑惑と千々に乱れる男の胸中がドラマにはない描写で、これが涙の結末へと繋がっていく。その他、妻の自殺の真相を一種ミステリ仕立てで武士の再生を描く「古今集巻之五」や、身分を越えた男の友情を描く「貧窮問答」など短編の名人芸を堪能しました。

2022/09/11

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