ならぬ堪忍 (新潮文庫)
ならぬ堪忍 (新潮文庫) / 感想・レビュー
じいじ
すべての作品とはいかないが、とても清々しい気持ちで読了しました。とりわけ表題作が良かった。少年剣士同士が決めた”命をかけた果し合い”を戒める、上役武士が素晴らしい…「武士たるもの、御奉行のほかに〈ならぬ堪忍〉などはない。勝っても負けても、命を落とす果し合いはつまらぬことだ。まかりならぬ…」とたしなめる。たった5頁の掌篇なれど、武士の心得―魂がぎっしり詰められた傑作だと思います。今作に収載の13篇は、山本周五郎が名をなす前の旧作とのことだが、もう一度読み返したいお気に入りの短篇集でした。
2022/10/10
藤月はな(灯れ松明の火)
2篇を除いて義理と人情に溢れた爽やかな滋味のある短編集。しかし、初めの「白魚橋の仇討」は部外者からやいのやいの言われた末の悲劇と余りにも割り切れない評価に、ある意味、無責任で過剰な正義を振りかざしがちなSNSやその影響による風評被害などを重ねてしまい、苦さを感じてしまう。個人的に「悪伝七」と「五十三右衛門」という自分の信念と感じた違和感を見逃さずに確認を取る中道性のある男たちが好き。特に「悪伝七」の忠太郎の言葉は歯切れがよく、思わず、声に出して読んでしまう程でした^^友人思いの忠公、あんたも良い男だよ。
2018/05/17
nakanaka
13編から成る短編集。「五十三右衛門」と「宗近新八郎」は御意討ちがあるもののターゲットとの会話で真の悪を知り翻意するというストーリー(五十三右衛門の場合、正確には御意ではないが)。個人的には好みだった。また、美男子・秋津男之介が次々に道場破りと見せかけ上手く取り入る詐欺を働いていく「津山の鬼吹雪」も面白かった。この短編集最後の「鴉片のパイプ」は時代小説では無いという点と、ミステリアスな展開である点が他の作品とは一線を画し印象に残った。
2020/03/14
びす男
短編集のなかでも一番短い話が表題作。時代小説だからといって、剣が強いとかいうだけの話ではなく、人間関係を上手に扱っている。「津山の鬼吹雪」「悪伝七」が特に気に入った。とくに後者は、剣の腕こそ冴えないが、生一本の心で強敵に立ち向かう話だ。野心家の美男子が負けるのは珍しいパターンで、喝采をあげたくなった。
2017/04/01
のびすけ
戦前に発表された作品集。理不尽な立場に置かれた人たちの生き方や忠義、心構えをテーマにしたような武家もの作品が多かった。表題作「ならぬ堪忍」はわずか数ページの小編だけど、人としての生きる本道について示唆を与えてくれる。「湖畔の人々」は作之進の心意気が清々しい作品だけど、作之進の境遇を知ってあっさり決断を変えてしまう兵庫に少しモヤっとした。「宗近新八郎」「鏡」は胸がすくような結末が心に残った。
2023/12/13
感想・レビューをもっと見る