ながい坂 上 (新潮文庫)
ながい坂 上 (新潮文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
この本も何十年ぶりかに読みなおすことにしました。主人公が自分の生まれた身分を顧みながら努力して出世していくもので、私が昔読んだイメージとはかなり異なりました。幼少の時に父親の姿を見て、このままではいけないと努力するのですが、少し身勝手な感じを今回は受けました。もう少し家族を大事にしたらという気もしました。藩主に認められた地道な仕事ぶりは大したものだという気はします。
2024/08/31
ふじさん
徒士組という下級武士の子に生まれた小三郎は、八歳の時の屈辱的な出来事に出会い、人間としての成長を誓い、学問と武芸に励み、成長して名を三浦主水正と改め、藩内で異例の出世を遂げる。若き藩主の飛騨守昌治の信頼が厚く、彼の計画した大堰堤工事の責任者として工事の完成を目指して辣腕を振るうが、次々と難題が押し寄せる。妻や実家との軋轢、ななえの妊娠、異例の出生に対する妬み、清廉潔白な生き方への危惧等、取り巻く状況は厳しさを増す一方だ。これから、主水正がどうこの苦難な道を乗り越えて行くのか目が離せない。
2022/10/13
AICHAN
図書館本。ある藩の軽格の侍が、身分の低さゆえに子供の時分に大きな屈辱を味わい、その悔しさから奮闘していく物語。なんだけど…、とにかく濃密な物語で、例えば硬い岩盤をノミひとつで掘削していくような感触だった。なかなか掘り進められず、しかしときどき柔らかい岩盤に当たってするすると掘り進められたり、たまに金鉱に当たって喜んだり、物語にはヤマやご褒美があり、読むのをやめられない。こんなに濃密な物語を読んだことはたぶん初めてではないか。
2022/02/03
ソーダポップ
徒士組という下級武士の子に生まれた阿部小三郎は、8歳の時に偶然経験した屈辱的な事件に深く憤り、人間として目覚める。「憎むものは憎め、俺は俺の道を歩いてやる」学問と武芸に励むことでその屈辱をはね返そうとした小三郎は、成長して名を三浦主水正と改め藩中でも異例の抜擢を受ける。「身分の違いがなんだ、俺もお前も同じ人間だ」異例の出世をした主水正に対する藩内の風当たりは強く、心血を注いだ堰堤工事は様々な妨害を受ける、、、人生というながい坂を人間らしさを求めて一歩一歩踏みしめていく主水正、下巻も楽しみ。
2022/11/13
まると
久しぶりの山本周五郎。上巻では、幼い頃、身分の違いから味わった屈辱をばねに文武に励み、下級武士から立身出世した小三郎=主水正が、藩内の派閥抗争という抗えぬ運命に身を投じていくさまが描かれる。さすが周五郎さん。起伏に富んだ筋書きもさることながら、表情や仕草が目に浮かぶようでその豊かな表現力に感嘆します。「樅ノ木は残った」と同様、各章に挟まれた断章が小気味よくて、物語をうまく紡いでいますね。悲劇的な末路が想起されますが、正義感あふれる堅物・主水正に良き人生を歩んでほしいと願いつつ、下巻を楽しみたいと思います。
2023/01/30
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