赤ひげ診療譚 (新潮文庫)
赤ひげ診療譚 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ykmmr (^_^)
江戸時代の、教科書にも出てくる有名機関を舞台にした小説。今で言う、半ば『出向』という感じで派遣されてきた保本。そこには、若干大胆で乱暴な、『赤ひげ』と呼ばれる医長と、多数の弟子がいた。自分の『理想』に反する配置転換と、赤ひげの、こちらも一見、『傍若無人』に翻弄され辟易して行くが、自分の職務に対して真摯な赤ひげと、この時代の世相・関わる人の人生にも触れて、成長していく。医療や同業種は、患者の疾患だけではなく、その方の『人生』にも関わる事があるが、法律・知識・技術、今だと個人情報によって、
2022/07/16
Willie the Wildcat
世の中に散見される様々な理不尽。それらの理不尽に直面する苦悩と、それらの解消・改善に取り組む苦悩。両極の苦悩の渦中に身を置き、物事の本質を自身に問いかけることで生じる主人公の心情の変化。「裁きと赦し」、そこに人が人たる理由が滲む。主人公が1つ1つ心底に積み重ねる”理不尽”が、己の理不尽への気づきとなる過程が印象的。直球のまさをと、変化球の法定。もがきながらも前進している姿勢が共通項であり、ヒトの人生を体現しているのではないだろうか。だからこそ、主人公の心にも響き、「罪を知る」に至った気がする。
2022/09/09
NAO
【2021年色に繋がる本読書会】貧しい人々のために、休む間もなく診療を続ける赤ひげこと新出去。貧しい人々からは金を取ろうとせず薬を惜しまない新出は、個人的に診療している裕福な商人や武士からは高額な診療代を取り、ときには、自分が知る秘密をネタにゆすったりもする。ただ善良なだけでは貧しい人々を救えない。金がないことには何一つできない。八つの話は、どれもが社会の縮図だ。貧しい人々の負の連鎖、権力者の傲慢な行為。この話は、江戸を舞台としていながら、現代社会の姿そのものでもある。
2021/05/18
ともくん
保本登の成長に、驚かされる。 良き師がいれば、自分の良き成長に繋がる。 良き師との出会いは、偶然だが、それを自分で見つけられるかどうかは誰にも分からない。 自分の目を信じ、相手を信じることから全ては始まるのではないだろうか。
2021/10/29
白のヒメ
山本周五郎さんの本は初めて。しかし、文中の言葉「人間ほど尊く美しく、清らかで頼もしいものはない。だがまた人間ほど卑しく汚らわしく、愚鈍で邪悪で貪欲でいやらしいものはない」に雷に打たれたように共感する。私の思いを正確に表してくれていたから。「罪を知らないものだけが人を裁く。罪を知った者は決して人を裁かない」これもそう。そして「理解されるよりも、理解することを私が望みますように」マザーテレサが残した言葉の通りの人物が「赤ひげ」だ。ここまで感嘆したのは久しぶり。山本周五郎さんを追ってみようと思う。読メに感謝。
2020/07/18
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