野づらは星あかり (新潮文庫 草 137-9-I)
野づらは星あかり (新潮文庫 草 137-9-I) / 感想・レビュー
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
茨城県の農村。敗戦の日から物語は始まる。大豆を植え小麦を植え稲を植え、むしろや縄を編んで一日中野良仕事に追われる百姓の暮らしは厳しい。戦後の食糧難で農家は儲かるはずだけど、そういう事は無くひたすら作っては売り1枚切りの服で生活をする。土から作物を頂くという百姓達の謙虚な姿は神々しく、食べ物やモノ全てはヒトの手で作られているという事を忘れている自分はつくづく反省したのでありました。タバコ葉の栽培や戦後の50銭銅貨の材質など、知らなかった事も多く面白かった。
2017/02/02
なおぱんだ
大長編「橋のない河」を代表作に持つ著者の長編作品です。貧しいながらもたくましく生きる農民の家族の姿を描いた作品で、終戦前後の混乱とした時代にあっても夢と希望を失わない夫婦とその子供たちが、読む側に明るく生きる力を与えてくれます。著者らしいとてもいい作品でした。戦争という混とんとした社会の底辺で生きる難しさをものともせず、貧しさの中で障害を乗り越えて生きていこうとする家族のたくましさが胸を打ちます。「橋のない河」に通じるテーマがこの作品にも流れていて、日本人が持つ正直さと心の豊かさを感じさせてくれました。
2021/01/23
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