五番町夕霧楼 (新潮文庫 み 7-1)
五番町夕霧楼 (新潮文庫 み 7-1) / 感想・レビュー
ミカママ
【遊廓部課題】高校時代バイブルのように読み、その後のわたしづくりに間違いなく影響を与えた一冊。今読むと、夕子の相方の櫟田正順の魅力がまったく伝わってこない上に、肝心の夕子の心情も曖昧に描かれている。水上さんの視点はどこなのだろうと考えるに、やはりこれは「遊廓」だと思う。次点で三島『金閣寺』へのオマージュといったところか。なんど読んでも色褪せない美しい日本語が、わたしの心をつかんで離さない。
2018/11/28
遥かなる想い
戦後の京都 西陣の夕霧楼で生きた夕子の 物語である。西陣の大旦那に 水揚げされながら、学生 櫟田に心通わせる 夕子の心情は、昭和の哀しい 儚い恋の 定番だが、底に流れる 故郷の村の 貧困の潮流がなぜか 懐かしい。 金閣寺炎上にモチーフを得たらしいが、 夕子の一途さ、健気さが 心に残る、作品だった。
2018/08/30
ゴンゾウ@新潮部
三島由紀夫の金閣寺をきっかけに読んだ。金閣寺に火を放った修行僧より京都の妓楼に身を売った娼妓夕子が主役。幼い頃自分と似た境遇の修行僧櫟田に会うために京都の妓楼に入った夕子。身体を売り家族を守り櫟田をしたう純情さと甚造を翻弄する妖艶さの二面性に女性の怖さを思った。最期はこうなることは予測していたが。。。
2016/06/21
じいじ
水上勉は、遠い昔に2・3冊読んだ記憶がうっすらと残っているが、何を読んだのかは忘れている。書棚に埋もれていた文庫を読んでみた。昭和20年代、京都色街の夕霧楼で娼妓となった夕子の人生が丹精に綴られている。その19歳の夕子が、白肌で器量がよく利巧な娘に描かれている。女楼主が最初に選んだ相手は60歳、老舗の経営者。彼は、夕子を天性の娼婦だと思い込むことで、自分の執着心から逃れたいと焦るのだが、思いとは裏腹に彼女のトリコになっていく。男の儚い本性を垣間見た気がする。204頁なれど、充分な読み応えであった。
2021/09/22
nyaoko
読メ遊郭部:課題図書。図書館で借りたらかなり日焼けしていて相当年季の入った本でした。それでも今も尚読まれていると言うことは素晴らしい作品なんだなぁと。そしてこれは三島由紀夫の「金閣寺」のオマージュなのかな?中身は本当に切ない。静かで、薄暗くて、夕暮れ時のあのなんとも言えない気持ちになるのです。夕霧楼の女達がみんな、とても優しくて、情に深くて、それもまた胸を熱くさせた。そして、東北の山村の景色の描写がとても心に残る。うーん、良かった。久々に静かなる感動。
2016/12/23
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