飢餓海峡(下) (新潮文庫)
飢餓海峡(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
骨太の社会派小説だった。 八重視点の物語から 一転、下巻は樽見京一郎の 物語となる。 舞鶴から 北海道 函館 下北と 樽見京一郎の 過去を辿る旅は、時代の暗い雰囲気もあって 重い…日本全体が飢えていた時代に 起こされた犯罪…人間を 社会を描いた 作品だった。
2018/09/07
あつひめ
下巻は、ひたすら刑事達が足を棒にして犯人を追い詰める。短い期間なのに上巻と同じくらいのページ数。ほんとに細かく時にはじれったくなるような場面もあったが少しずつ犯人ににじり寄っていく。果たして、この告白を全て鵜呑みにするか。そこに、この時代の落とし穴があるように思う。暮らしの貧しさ。人は誰しも豊かに暮らしたい、でも叶わない生まれもっての貧乏暮らし。八重の人生は大きく変わった。もしも出会っていなかったら、男の人生自体も変わっていたかも。刑事達と一緒捜査した気分だ。あー、やっぱりというラストだった。
2014/08/20
goro@80.7
再読了。犯罪を扱ったからミステリーかと言われればそうなのだろうが氏があとがきで述べたように、これは京一郎と八重の哀しい物語。後半は京一郎の人生を辿る旅となるが読む手は止まらない。だから許されるわけではないが、どうしても引き込まれてしまう魅力がある。それは八重に対する哀れみか貧しさに耐える母の姿か、追うものの執念かそれとも京一郎への怒りか同情もあるのかと思う。大阪にいたとき舞鶴へは北海道に渡るために何度かフェリーに乗りにいったなぁ。また船で旅がしたくなった。死ぬまでにもう一度読みたいと思う本です。
2022/06/21
みも
倒叙ミステリの形式を採りながらも、本作の価値は謎解きやアリバイ崩しにあらず。理不尽な宿業を背負い、戦後のどさくさに紛れ犯罪で得た資金を元手に成功者となる男が、10年後その築き上げた篤志家としての地位を死守する為止む無く犯す殺人。貧困・成功・転落…その波乱の人生。いざなぎ景気とともに成長した僕は本当の飢餓を知らないが、言語を絶する飢餓状態で津軽海峡を小舟で渡った男の心情を推し量ると、暗澹たる想いと共に悲哀に没入しそうになる。だが殺された人間には家族があり、その喪失を嘆き悲しむ人々がいる事を忘れてはならない。
2019/01/05
キムチ
海外モノは原作を読んで映画へが常套。日本は、申し訳ないが内田監督の評判は聴きつつも観ず。水上氏の描き出す温度に闇から這い上がって行く人の想いに、力に昭和の姿を見てお腹一杯。
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