夕暮まで (新潮文庫)
夕暮まで (新潮文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
1978年に発表されたこの作品。中年の佐々と 若い女性杉子の会話がひどく艶っぽく 感じるのは「夕暮族」のイメージが強すぎる からなのだろうか。 男女の官能的な描写は艶かしいが、杉子の 圧倒的な存在感は会話が多いこの小説に リズムを与えている。それにしても この本、 登場する女性たちがいずれも割り切ったように 薄幸で透明感を感じるのは 著者の好みなのだろうか..ひどく大人の物語だった。
2016/06/11
じいじ
妻子ある中年男と22歳の女との不倫の恋の話である。昭和53年(1978)の刊行とあるから、すでに半世紀経っているが旧さを感じさせない。恋に年代は無関係なのだろう。内容は、性描写もあってかなりエロいのだが、陰湿さはもちろん嫌らしさを感じさせないのは、著者の筆力故なのだろう。私は「性」へのこだわりに吉行哲学を感じた。二人の情事での会話には、思わず笑みを浮かべてしまった。頑なに処女膜を残すことにこだわる女と、それを許す男が、吉行淳之介が言いたかった、この小説のポイントではないだろうか…。
2019/05/16
YM
妻子持ちの中年男と、22歳の女性の奇妙な関係。付き合っているが、女性は処女を守るため最後までさせない。代わりにオリーブオイルを股に垂らして…。ここを読んだらドロドロの不倫小説かと思いきや全然違う。主題は2人の距離感だろう。恋に溺れるでもなく、本当に処女かも分からず、ゴールがないことも理解しつつ嗜んでいるよう。でもお互い重要な存在。仕事もバリバリで、家庭もあって、他にもガールフレンドがいて。ピグマリオニズムの要素もちょっと感じる。都合いいけどそのダンディズムに魅かれる。
2015/02/26
扉のこちら側
初読。2015年941冊め。妻子持ちの中年男性と22歳の女の奇妙な肉体関係。奇妙というのは、「真っ白なウェディングドレスを着てお嫁に行く」のが夢だという女が、かたくなに処女を守ろうとするから。結果二人の関係は女の太ももにオリーブオイルを垂らしての素股というものになる。この著者の作品は概ねストーリー展開を楽しむというよりも、散文詩のような繊細なあいまいさを楽しむものなのだろう。若い男により彼女が処女を失うと関心をなくしてしまったという中年男を、もっと引っ掻いて噛みついてやればよかったのに。
2015/08/06
こばまり
【再読】ちょうど杉子の年頃以来の再読ですが、今となっては114頁の園子の台詞「そういうのが、一番、悪質なのよね」の心境。しかしこの物憂い小説の真髄をどこまで理解できているのか心許ない。余談ながら私が所有しているのは前川直氏のイラストが素敵な旧い版。文庫本は得てして昔の装丁の方が洒落ていると思うのは私だけでしょうか。
2015/09/22
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