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ヴェニス光と影 (新潮文庫 よ 4-15)

ヴェニス光と影 (新潮文庫 よ 4-15)

ヴェニス光と影 (新潮文庫 よ 4-15)

作家
吉行淳之介
篠山紀信
出版社
新潮社
発売日
1990-08-01
ISBN
9784101143156
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ヴェニス光と影 (新潮文庫 よ 4-15) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

吉行淳之介と篠山紀信によるヴェネツィア(本書の表記はヴェニス)コラボレーション。吉行にとっての5泊6日(篠山はもう少しいた)は、体調(長時間のフライトがこたえた模様)もすぐれず、あまり出歩かないままにホテル(最高級のダニエル・エクセルシオール)で過ごすことが多かったようだ。ただ、そうした彼の文章は、シーズン後のヴェネツィアの頽廃と揺蕩いとに、うまくマッチしているように思われる。ヴェネツィアは、慌ただしく駆け抜けてはいけないのだ。篠山の写真で一番彼の真骨頂を発揮するのは、やはり女性を撮ったナディアに極まる。

2016/09/15

新地学@児童書病発動中

吉行淳之介のペンと篠山紀信のカメラで、水の都ヴェニスの光と影を描き出す本。吉行氏は体調が悪かったようで、ヴェニスの風物に目をめけずに内にこもりがちになってしまう。しかし、あの繊細な皮膚感覚はこの旅でも健在で、旅人があまり目を向けそうにないヴェニスの影の部分をしっかりと捉えていた。篠山氏の写真は美しく華麗で、この街が持つ魅力を鮮やかに表現している。数枚収録されている、初老の吉行氏(相変わらずの伊達男ぶり)の写真に、何とも言えない懐かしさを感じた。

2015/01/11

佐島楓

淳之介さんのヴェニス滞在記と篠山紀信さんの写真のコラボレーション。体調が悪い中でも食欲はある淳之介さんのエッセイが楽しくもあり、沈殿しているような不吉のにおいを嗅ぎつけていらっしゃるようで不気味でもあり。30年近く前に刊行された本だが、今でもヴェニスの景色自体は大きく変わっていないのだろう。

2017/05/06

紫羊

昭和55年刊行の単行本の再読です。その頃高校生だった私にとっては、いろんな意味で少し背伸びして買った思い出深い一冊です。35年を経て読み返したというのに、文章と写真のどちらについても、細部まで記憶に残っていたことに、自分ながら驚いています。とても良い作品だと改めて感じました。文庫版も絶版になっていたので古書で入手しましたが、また元の体裁で再版してほしいものです。

2016/10/09

ホークス

半分が写真で、作家と写真家が張り合っている様な作り。巻末の対談が種明かしになっていて面白い。ヴェニスが水と石の特殊な世界だという事が、この対談でよく分かった。吉行氏のエッセイは、笑う話でも何だか気だるく、深い絶望感の様なものがある。それがヴェニスの幻想的な景色によく馴染み、ちょこっと映った写真もカッコいい。当時55歳との事で、彼我の差にがっくりする。風景写真には廃墟的な荒びが感じられ、人物も個性があり、今となっては真似できない大人っぽい一冊。

2017/10/03

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