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ごくらくちんみ (新潮文庫)

ごくらくちんみ (新潮文庫)

ごくらくちんみ (新潮文庫)

作家
杉浦日向子
出版社
新潮社
発売日
2006-06-28
ISBN
9784101149189
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ごくらくちんみ (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

かつて「小説新潮」に連載されていた、全部で68篇からなる掌編小説集。すべて表題通り珍味を巡るお話。漫画も絶品だったが、文章もまた絶妙。本当に美味しそうに書いている。例えば「炊きあがったごはんを、吹き冷まして一口。あえぐうれしさ」、「旨みの凝縮。表面に鮒の脂がフロスト状に膜をはる。身はゼラチンのなめらかさ。オレンジの卵はほくほくと粒立ち」といった具合。そして、この本では全編に亘って、食べることだけではなく、生きることの喜びに溢れていた。その日向子さんは、もういない。この本が最後になってしまったのだ。

2012/10/29

優希

面白かったです。珍味にお酒、それを小道具に紡がれた短い人生の一コマ。食べたことのないものばかりだけれど、そっと口に入れて味わっているような感覚になります。酒と肴の取り合わせが絶妙で、明日への一歩をふっと軽くしてくれるような雰囲気を感じました。どこか安心感がありながら粋。この作品が遺作というのが残念でなりません。

2016/05/08

ふじさん

昔、週刊ブックレビューで紹介された本だと思い本屋で見つけて買った本だ。長い間生きてきたが、食べたことのないちんみがなんと多いことか。本に出てくる物は、口にしたことがないものが多かった。ちょつと残念な気がする。最近は、生臭いものが昔より苦手になり、口にする機会もめっきり減った。もともとが、ウイスキーやバーボン等洋酒が好きなのでなおさらだ。ちんみと酒を入口にした男女の物語。粋で味わい深い、著者最後の傑作掌編小説。この本片手に、ちんみで酒を嗜みたいものだ。

2021/07/05

カムイ

杉浦日向子氏の漫画は数冊読んでいるが小説は初、3、4ページの物語に紡がれる、酒と珍味の至福時間を堪能した。【ばくらい】は東北ヘ旅行の時に居酒屋で初お目見え!色鮮やかな物体そしてこれが当に日本酒にピッタリ珍味中の珍味であった海鼠腸と海鞘!無敵でしょ🤩68の掌編には男と女のマリアージュなのです。さて今夜は日本酒をお伴にゴッコの唐揚げと杉浦日向子氏を偲んで江戸満喫と洒落ますかね。

2021/09/27

夜間飛行

休筆後6年かけて連載したそうだ。この最後の作品を作者はどんな気持で書いたのだろう。色々な人生と食べ物を描くことで、生きとし生けるものを讃えているような。「骨と皮の間に命がある。たいしたことない、唯一の命が」「年をとるのも、また愉し」「たぶん明日は、大丈夫。こんなことで、死にはしない」…こんな科白が出てくる。珍味との出会いもまた一期一会だ。愛しみ、悲しみ、希望、諦め、勇気、感謝…など、いろんな感情すべてを良しと肯定している。百物語が化け物の祭なら、これは食べ物の祭だ。ほわっと明るく温かく、涙が出そうだった。

2014/03/21

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