杉浦日向子の食・道・楽 (新潮文庫)
杉浦日向子の食・道・楽 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
江戸を描けば絶妙の杉浦日向子さんだが、この人の食にまつわるエッセイがまたいい(もっとも、今回はお酒の話題の方が多いくらいだが)。食を語らせてさえ「いき」なのだ。九鬼周造によれば「いき」の第1の徴表は「媚態」にあるが、彼女の振る舞いから文体までが「媚態」に溢れている。第2の徴表は「心意気」にあるが、「いただきます」の心を常に忘れないことからこれも合格。第3の徴表は「諦念」だが、彼女には「生老病死」のすべてを受け入れる諦念と覚悟が常にあった。それにしても、日向子さんが死を受け入れるのは、あまりに早過ぎた。
2014/02/02
優希
杉浦日向子さん最後のエッセイ集。体調が万全ではないことも感じられますが、それでも大切な憩いの時間を楽しんでいたことが伺えます。今を生きる江戸の風流人の人柄が滲み出ているのが好みでした。江戸時代を好きになるきっかけを与えてくれた杉浦さんに感謝しつつ、時間を大切に生きた姿の憧れを忘れないようにしたいものです。
2017/07/29
佐々陽太朗(K.Tsubota)
「酒の呑み方七箇条」、御意にござりまする~。杉浦日向子氏に蕎麦屋での憩い方を教えていただき、酒を呑む時の心構えを諭していただいた今、これから老いを迎えようとする私の人生は、しみじみ味わいを深めていけるような予感がする。思えば齢五十を数えるまでは、椎名誠氏率いる「東ケト会」(東日本何でもケトばす会)に憬れ、いつか一員に加えてはいただけまいかと念願してきた。齢五十を少し過ぎた今、杉浦日向子氏が立ち上げられたという「ソ連」(ソバ屋好き連)の末席を汚させていただきたいと切に願う私である。
2012/03/08
こばまり
早いもので没後10年。自らの体調に思うところがあったのか、後半は病についての記述が増えます。愛用の酒器のグラビアが素晴らしい。敬意を表して一献傾けながら読みました。
2015/08/27
penguin-blue
【さよなら三省堂本店本】(←勝手に命名)として購入した本の一冊。鷺沢萌さん、氷室冴子さん、干刈あがたさん…等早逝されたことによりもう新作が読めず残念な作家さんはたくさんおられるが、杉浦さんもそのひとり。今回買おうと思ったきっかけは彼女の文章が久々に読みたくなったこともあるが、素敵な酒飲みだった杉浦さんがひとつひとつ買い求め、愛情をもって使ってきた季節ごとの酒器の写真に魅かれたから。淡々とつづる中に深い愛情を感じさせる写真家のお兄さんの後書きもいい。久々に「ごくらくちんみ」も読み返そうかな。
2022/06/20
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