人斬り以蔵 (新潮文庫)
人斬り以蔵 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェルナーの日記
さすがは司馬遼太郎先生。本作の題名『人斬り以蔵』をはじめ、俊逸な作品が8編収録されている。どの物語にもいえることだが、主人公の人物造形が素晴らしいにつきる(おこがましい発言ですみません)!どの作品もとても楽しく読むことができました。個人的に、とくに面白かったのは、『おお、大砲』、『言い触らし団右衛門』と『美濃浪人』、『売ろう物語』(収録作品の半分になっている(汗))といったあたりでしょうか。
2015/10/25
こーた
司馬さんの短篇て読んだことあったかしら。連作ならまだしも、独立した短篇集となるとちょっと記憶にない。長篇に組みこめなかった情景を、短篇に仕立てて救いあげる。長篇のおもしろさはわかりすぎるほどよく読んできたけれど、短篇だってべらぼうに巧くて唸らされる。お気に入りは「おお、大砲」。無名(架空?)の人物たちが生き生きと描かれ、そこに社会まで投影される。表題作は半平太と以蔵の対照がいい。「割って、城を」。この短篇そのものが、渋い茶碗のように鈍く光る。人物たちの交錯。そこに物語が生まれ、歴史のなかで転がされてゆく。
2021/02/27
みも
歴史上の人物には、綺羅星の如く輝くスターがいる。そのスターは後世に名を残し、多くの人がその功罪をも知る。一方、有名ではなくとも確かな足跡を残したサブ的な人物達がある。この短編集では、幕末や大坂冬・夏の陣にて名を馳せた、言わばいぶし銀と呼ぶに相応しい人物達を拾い上げる。官軍参謀・大村益次郎、土佐の天誅人・岡田以蔵、講談で名高い塙団右衛門直之、幕末の名医・所郁太郎、そして大坂夏の陣で華々しく散った豪傑・後藤又兵衛等。いずれもその功績より人間性にフォーカスし、人間的魅力に溢れた人物として、その光彩や陰影を描く。
2021/04/07
ナルピーチ
司馬作品、初読。幕末の時代を生きた著名人にスポットを当てた8話の短編集。昭和を代表する文豪が描く人物達はどの物語でも個性豊かで哀愁漂う魅力を感じる事ができた。表題作の「人斬り以蔵」では岡田以蔵の半生を垣間見る事ができた気がする。彼の背負った運命が少なからずとも今の世に影響を与えた事は言うまでもないだろう。歴史に疎く、その他名前も存じ上げない方々もいたがとても面白い内容だった。次は長編作品にも挑戦したいと思う。
2021/08/04
Die-Go
再読。戦国幕末期に躍動した有名無名の男達の姿を描いた短編集。表題「人斬り以蔵」の岡田以蔵が考えることを"えらい人"に任せ、人を斬ることに自らの価値を見出だした姿からは切なくも儚い姿が浮かび上がる。どの作品も軽やかに、しかし、確かに歴史の中に足跡を遺していった漢達の爽やかな姿が読み取れた。★★★★☆
2018/06/30
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