唐獅子株式会社 (新潮文庫)
唐獅子株式会社 (新潮文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
こうしたヤクザものに顔をしかめる人もいるだろう。しかしヤクザの世界の不条理は遍く他の世界にも存在する。親分から言いつけられた無茶を何とかしようと頑張る姿は、サラリーマンの世界そのものではないか。弱小組の悲哀は中小下請企業そのものだ。また本書はアイロニーに満ちている。ヤクザは無頼漢として怖れられてはいても真っ当でないと蔑まれる。そうしたヤクザが滑稽な役回りを演じる。読者は一種の優越感を持って読んでいくのだが、いつしか自分の知識の無さ、浅薄さに気づかされることになる。ただのおたわむれではないのだ。すごい。
2016/03/31
kokada_jnet
高校生の頃、以来の40年ぶり近い再読。筒井康隆による詳細な元ネタ解説付きでも、当時まったくわからなかったギャグのネタが、かなりわかるようになっているのが嬉しい。『カサブランカ』ももちろん知らず、東映ヤクザ映画というジャンルの存在すら知らなかったから、ほとんど何もわからなかっといって言い。なお、『笑学百科』によると、この作品の第一話の結末は、『熱海殺人事件』の結末のパロディということだが。あまり、よくわからないな。
2021/10/30
はつばあば
パロディーとは「ユーモアをこめ、さりげなくひねるのが腕の見せどころ。変えすぎては格好悪いし、元ネタと間違われたら、ただの偽物になってしまう」と。そんな知的なモノを知らずに育った。勿論本にラブシーンがあるだけでもダメの堅固な家で育ったので、この本の笑いのツボが理解できない。サラリーマンと云う稼業も辛いものだと歌われたものだが、なんのなんのヤクザ屋さんも負けてはおらぬ。仕える者の悲哀がパロディーとなって面白いようだが、背負う刺青が泣き笑いしているようで可哀想になってきた
2016/04/24
かんらんしゃ🎡
今野敏の任侠シリーズをイメージして手に取ったけど。もう少しアバンギャルドと言うかアナーキーと言うか筒井康隆寄りのナンセンスさが匂う。こういった本は作者と感性が合わないと全く面白くない。ナンセンスをカラリと笑うにはこちら側にもセンスが要るのだ。
2019/03/19
たか
任侠道はもう古い。ヤクザだって近代的にならねば!大親分の号令で須磨組一家の、シティ・ヤクザへの大変身が始まった…。▼ かつて映画化もされた本。主人公はムショ帰りの泣く子も黙る『不死身の哲』。文体がハードボイルドであり、知的で明晰な語り口であるが、組の親分が奇想天外な行動をするので、 黄金時代のヤクザ映画のパロディやギャグが楽しめる。 本書の解説を筒井康隆が書いているのが大きなオマケ。筒井氏は、作品中のパロディやギャグを丁寧に解説してくれる。Cー評価
2023/05/14
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