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夢の砦 上巻 (新潮文庫 こ 10-18)

夢の砦 上巻 (新潮文庫 こ 10-18)

夢の砦 上巻 (新潮文庫 こ 10-18)

作家
小林信彦
出版社
新潮社
発売日
1990-06-01
ISBN
9784101158181
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夢の砦 上巻 (新潮文庫 こ 10-18) / 感想・レビュー

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ワッピー

傾きかかった雑誌「黒猫」の編集会議のオブザーバーから始まった前野辰夫の悪戦苦闘。60年代は放送メディアの台頭、そして新しい価値観が醸成されつつあった変化と不安に満ちた時代だった。編集の素人だった前野が登用されたことで、編集部は軋轢とともに変わり始め、事態は好転するかに見えたが…業界の魑魅魍魎の跋扈、新しい雑誌の創刊、クロスメディアでの活躍、陰湿な嫌がらせを続ける編集長こと「ゴム仮面」の降板、そして恋愛模様も盛り込まれ、カタルシスとともに危なっかしさの漂う展開です。ゆっくり読むつもりが、瞬読の面白さでした。

2020/04/17

博多のマコちん

24年ぶりの再読。‘60年代前半の時代の匂いが全巻を覆う。場所は初のオリンピック開催へ向けて日本のエネルギーが発散していた東京の街。物語の途中、作者による時代背景の解説もあり、子供の頃を思い起こさせて懐かしい。様々な懐疑的な気持ちを抱きながらも雑誌・テレビの世界に踏み込んで行く主人公の躍動する毎日は、まさにその頃の時代そのもの。今となっては題材は古くなったが、目の前のものに全力を注ぎながらも、未来(「夢の砦」?)も志向する姿は、いつの時代でも眩しいものがある。下巻での主人公の活躍が楽しみ。

2020/01/19

Yuji Endo

作者の自伝的長編。発売当時、かなり大部の単行本を徹夜で読んだっけ。60年代の軽い空気の中、多彩な才能が闊歩している。その中に混じりながらも鬱屈を抱えている主人公。60年代の「坊ちゃん」はかなり複雑だ。テレビという狭い世界を通して、時代の空気を丸ごとつかんだような傑作だ。

2015/08/25

ゆーいちろー

作者の分身たる主人公が、ひょんなことから雑誌の編集長に、そして草創期のテレビ業界へと進出していくある種痛快な青春小説と言っていいと思う。ただ、主人公を含め登場人物たちはさまざまな鬱屈を持っており、必ずしも爽快な物語ではない。「夢の砦」これは、主人公が夢想する色々なジャンルの有能な若者が集う一種の理想的コミュニティを表している。作者は無論、この理想が当時としても古くなりつつあったことを示唆している。高校生の頃のわたしはまだ、その理想に憧れの気持ちとともに共感することができたのだが・・・。

2010/09/19

wang

1960年代初頭。東京オリンピックに向かい高度成長期真っ只中。マスメディアはラジオ全盛からテレビが隆盛に。バラエティ番組が生まれ始める中で業界人は活力に満ちているが、滅茶苦茶なところもある。出版界にも新しい波が訪れミステリー雑誌が乱立。そのひとつ苦戦中の「黒猫」編集部にアドバイザーとして加入した主人公・前野辰夫の不慣れな業界内で色々な妨害を受けながら新雑誌を軌道にのせようとあがく。推理小説界・テレビ業界など作者ご本人も含めて著名人も実名で登場。業界裏話的な挿話も面白い。夢の砦は作者の夢だったのだろうか。

2023/02/22

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