夢の砦 下巻 (新潮文庫 こ 10-19)
夢の砦 下巻 (新潮文庫 こ 10-19) / 感想・レビュー
ワッピー
いつしか文化発信者のような立場になって「遊びの会」を立ち上げ、ショービジネスの世界にも関わりを持っていくが、どこの曲がり角にも魑魅魍魎が潜んでいて、脇の甘い前野は自覚なく見えざる敵を作り出す。編集方針の二転三転、恋愛の破局、そして取り立てた若手の造反により追い込まれていくのは後の「極東セレナーデ」でも見られた構造です。赤星プロの手はかなり長いようですね。第18章の山の手・下町の違いを解説する部分は秀逸で、前野の性格形成の説明にもなっています。ラストのどんでん返しで、著者が人を信じられないという理由を理解。
2020/04/17
ゆーいちろー
作者いわく本作は「『坊ちゃん』の六一年度版」だそうである。だとすれば「うらなり」で作者が「坊ちゃん」を敗残者の文学である、と規定したように本作もそのように読まれるべきであろう。実際、主人公は、社内政治に敗れた後、決して成功者とはいえない境遇に陥っている。同時に、何故敗残者であり続けるのか?という問いには、作者のもう一つのキーワードでもある「大人になりきれない世間知らずさ」も浮かび上がってくる。時代なのか、最初から勝負を投げる気味のあるわたしたち(もしくはそれ以降)の世代から見て、彼らがうらやましく思える。
2010/09/19
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