裏表忠臣蔵 (新潮文庫 こ 10-23)
裏表忠臣蔵 (新潮文庫 こ 10-23) / 感想・レビュー
紫
実説の「元禄赤穂事件」から虚構の「忠臣蔵」へ。『「裏」忠臣蔵』の物語であります。冒頭、浅野内匠頭の刃傷の原因を「乱心」に求める理詰めの分析には大いに納得。逆恨みと再就職の望みから仇討ちに向かう赤穂浪士。面白おかしく出来事を脚色してしまう講釈師や芝居作者。無責任に移ろい、盛り上がる世論。プロットはところどころ脱線しつつも、一連の出来事のグロテスクさを描き出していきます。「世論は凡庸さに味方するだろう。凡庸な人間たちのふるまいや発言は、凡庸な大衆にとって理解し易いからだ」という吉良上野介の述懐が重い。星4つ。
2016/02/08
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