一週間 (新潮文庫)
一週間 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
一応完結したものとしては、これが井上ひさし最後の作品ということになる。未完の作品も複数残されているので、本作をもって井上ひさしが最後に語りたかったことというわけではないが、どうしても語っておきたかった作品であることは確かである。ここで問われたのは、シベリア抑留の問題であり、それはソ連側の相互不可侵条約破棄、そして日本側の関東軍(陸軍)の抱えていた構造的問題へのプロテストであった。ただ、レーニンの手紙以降はエンターテインメントに流れ過ぎて、肝腎の日ソ双方への告発が曖昧化されたのはまことに残念である。
2022/08/21
相田うえお
★★★☆☆19021 何もかもが驚く内容でした。読んでいて体が凍えそうになるし、顔がしかめっ面になってくるし、臭いまで漂ってきそうです。なが〜い1週間です。井上ひさし先生は凄い作品を世に遺されたのですね。【個人メモ】ポツダム宣言●無条件降伏しないと再攻撃して壊滅させる●連合国の条件には必ず従え●軍国主義者永久除去のため日本を占領する●領土を限定する● 戦争犯罪人処罰、民主主義強化、言論・宗教・思想の自由、基本的人権を尊重● 軍備以外の財産は保有可。将来、国際貿易復帰可。条件が満たされれば占領軍は撤退する。
2019/02/25
ふじさん
井上ひさしの最後の長編小説。極東赤軍の捕虜となった小松修吉の怒涛の一週間のお話。彼は、ロシア語の語学力を買われて日本人捕虜向けの日本新聞社の職を得る。そこで捕虜収容所の脱出に失敗した元軍医入江の脱出を纏めることに、そこで若き日のレーニンの手紙を入江から秘かに手に入れる。そこからこの手紙をめぐり小松と赤軍の争奪戦が展開する。ハチャメチャな内容だが、日ソの捕虜政策や捕虜の置かれた過酷な実情が丁寧に描かれ戦争の悲惨さを改めて知ることが出来た。また、ユーモアやサスペンスの内容も盛り込まれており面白い作品だった。
2021/03/04
NAO
舞台は、シベリアの収容所。ロシア語・中国語に堪能なことから日本語新聞の編集局に配属された小松修吉がレーニンの手紙を手に入れ、ソ連当局と戦うことを決意する。シベリアの収容所の中でさえ、自分たちの利益だけを考え、多くの下士官たちを死に追いやった関東軍の上官たち。こういったことが、今になってさえなかなか表に出てくることはないという悲惨さ。だからこそ、井上ひさしは、半ば笑い話のようにしてこの作品を書いたのだろう。そうでもしないと、寒い寒いシベリアの極寒地で死んでいった人たちが浮かばれない、と。
2022/08/19
優希
井上ひさしの遺作になります。スパイMを追った修吉は捕虜となったり、脱走に失敗した軍医の記録を書くように依頼されたり、とにかく破茶滅茶でした。サスペンス風ではありますが、ユーモアたっぷりで面白かったです。
2022/01/11
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