言語小説集 (新潮文庫)
言語小説集 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
7つの短篇からなる作品集。そのいずれもの小説の中核をなすのは「言葉」。言葉の持つ様々な側面をそれぞれ主題にして語ってゆく手法。例えば、巻頭の「括弧の恋」は文字。続く「極刑」では、お芝居の台詞。そこでは、かつて夢の遊眠社を率いていた野田秀樹氏をからかってみたり(もちろん、親しみを込めて)。また「五十年ぶり」では、『マイ・フェア・レディ』のヒギンズ教授ばりの方言学者を登場させたり。「見るな」では、戸来=ヘブライ伝説で遊んでみたりと、もう縦横無尽の楽しみぶりだ。希代の言葉使い師、井上ひさしの面目躍如たる一書。
2016/09/12
s-kozy
井上ひさしの最後の短編集。ワープロのディスプレイ上で”「”と”」”とが恋をして起きる騒動の顛末「括弧の恋」や方言学の泰斗がその知識から過去の因縁を思い出しさりげなく復讐を果たす「50年ぶり」、ある日突然思い通りの言語表現ができなくなる駅員の悲劇を描いた「言語生涯」など言葉のこだわり職人が著した言語に関する短編が七編、それに文庫化にあたり収録された四編が加わり十一編収録されています。クスリと笑わせられるものが多く、「さすが井上ひさし、目の付け所が♯でしょ」と感じました。気軽に読める作品だと思います。
2016/05/21
つねじろう
山崎努オススメ二人目。鉄板井上ひさしの言葉や文章をテーマにした短編集。それはまさに鬼に金棒、ダーティーハリーにマグナム、変幻自在の縦横無尽。抱腹絶倒の諸行無常。言葉の持つ視覚的、聴覚的側面を記号化や方言や外国語、駄洒落を駆使して楽しませてくれる。井上ひさしの真骨頂。特に口開けの括弧の恋なんかその着想に脱帽。極刑や言語生涯も良いね。決戦ホンダ書店も笑える。言葉自体の持つ不思議さや魅力を分かりやすく伝えてくれるところは流石。表裏源内猿蟹合戦や道元の冒険をもう一度読みたくなった。良書です。
2014/12/10
けんとまん1007
敬愛する井上ひさしさん。もう、これは、神業ではないかと思う。膨大な知識があり、その上でその知識を使う知恵があり、さらにユーモアがある。だから、時代を超えて楽しめる。
2021/08/11
ふう
帯にある「抱腹絶倒」とはいきませんでしたが、言葉を生業とする作者のセンスの良さ、品の良さ(?)を感じてにんまりできる作品です。言葉はおもしい、言葉は悲しい、そして言葉は怖い…。「括弧の恋」。キーボードを眺めてこんなことを思いつくなんて、想像力と遊び心に感心しました。
2015/01/06
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