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笹まくら (新潮文庫)

笹まくら (新潮文庫)

笹まくら (新潮文庫)

作家
丸谷才一
出版社
新潮社
発売日
1974-08-01
ISBN
9784101169019
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笹まくら (新潮文庫) / 感想・レビュー

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のっち♬

徴兵忌避をしたことで孤独の宿命を負った男。昇進を阻まれる戦後と、別名を名乗り家出令嬢と同棲した戦中の二つの時間軸で構成される。行も開けずに往還させ、倒叙法を駆使したモダニズム手法は、読者を主人公の「意識の流れ」に密着させる。内面の機微を丹念に捉えた文章は濃密で、スリリングな心理劇に仕上がっている。重罪の無罪化を伴う劇的な時代変化、アナーキズムと自由、国家と戦争、取り返しのつかない若かりし選択…イデオロギー臭が希薄だからこそテーマの浮上は読者に委ねられ、あらゆる物事を相対化させる。最終頁が残す哀切は絶品だ。

2024/09/26

kaoru

名作である。徴兵忌避で5年間全国を放浪し、敗戦後は大学職員となった浜田庄吉の内心の葛藤、戦後社会での微妙な立場が「意識の流れ」の手法で克明に描かれる。徴兵忌避者の家族の苦しみ、戦前戦後の食糧不足、憲兵に追われる恐怖、兵役を逃れた浜田を軽蔑する同僚の西の凄まじいモルッカ島での戦場体験など当時を経験した者にしか書けない迫力に溢れている。旅で知り合った四国の質屋の娘阿貴子との恋。友人の堺と交わされる「国家とは」「天皇とは」の議論。「国家の愚劣さなんだよ。だから、桁がはずれているんだ」最後に自由を得たと感じた⇒

2021/06/02

ω

素晴らしい作品ω! 徴兵忌避をして5年間方々を逃げ回っていた庄吉青年(いいとこの出)。それから20年、今は美人若妻と結婚もし大学職員として穏やかに暮らしているが…。。こりゃタマラン、マイッタ。ほへ〜!!

2023/05/02

ken_sakura

逸品ヽ(´▽`)/読み様に差が出そう。馬鹿がバレそうで怖い(^。^)徴兵忌避を完遂した浜田庄吉の20年後、往時に道連れた阿紀子の死を契機にした45歳の中年の危機♪( ´θ`)ノ徴兵忌避の五年に及ぶ旅の夜。旅の空と今の空が浜田の心象を表す様に唐突に切り替わる。表立っては出世敵、最も悲惨な南方帰り、西正雄の独白、あいつすげえな云々の章は可笑しい。浜田と西だけ戦争体験を他人に語らない。過去は消せない変えられない。堕落論じゃなくそれでも浜田の時は過ぎ行く、だろうか。解説は米原万里で感想調。読める人に呆然(^^;)

2018/06/30

ちゅんさん

すごくよかった。徴兵忌避者が戦時中どんな気持ちなのかは何となく想像できるけど、戦後しかも20年も経ったあとのこととなると全然想像がつかないし当の本人も全く予想してなかった事態になるのがとても興味深かった。戦中と戦後の話を行ったり来たりするのだがそれがあまりにも滑らか過ぎてはじめは読みづらかったけど慣れてくればこれが非常に良い。戦争とは戦後とはなどいろいろ考えさせる秀作、いや名作と言ってもいい作品だと思う。

2020/11/13

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