12人の浮かれる男 新潮文庫 (新潮文庫 つ 4-18)
12人の浮かれる男 新潮文庫 (新潮文庫 つ 4-18) / 感想・レビュー
saga
【再読】舞台上演のための戯曲である。当時は著者の作品であれば何でも読みたくて購入し、面白おかしく読んだ(はず)。今回は一歩引いた視点で読んだが、著者得意のドタバタナンセンスな展開に、どの作品も楽しめた。中でも「スタア」は第3幕までの作品。芸能人の醜態に、カニバリズム、地震と建物の固有周期から時空が捻じ曲がるSF要素が混在する3幕のドタバタが読みどころ。恐らく筒井作品に耐性のない読者には、嫌悪感が先立ってしまうんだろうな。
2021/08/24
そうたそ
★★★☆☆ 筒井康隆氏の戯曲集。処女戯曲の「スタア」はいまいちだったが、他のものは結構面白い。特に表題作なんかは裁判員制度が導入されてまもない今の時代にはなかなかタイムリーな一作だと思う。有罪とされている被告が裁判員(陪審員)により無罪にされるケースはあるものの、本作はその逆。弁護士によりアリバイが証明されている被告を陪審員たちが何とかして有罪にしてやろう、というもの。ハチャメチャ、ドタバタな感じがいかにも筒井氏っぽい戯曲だ。こうして戯曲を読むと、どうしても舞台でその作品を見たいという欲が出てしまう。
2013/07/22
ゆきのすけ
『改札口』があまりに恐怖で、読むのやめたくなった。猫の一件、気持ち悪い。しかも若い駅員の絡み方が強引だし、ひねくれてるしで、こんな駅降りたくない!このなかでは『将軍が目醒めた時』が面白かった。軍部にその狂気が利用されたおじさん。すごいな、狂ってもこれだけ口が立てば、狂っていても社会に必要とされるんだ。もちろん内容は支離滅裂。しかしながら、それでも何かを伝えている。結末がまた、ね。お医者さん達、どう記者さんに伝えるんでしょうね。今度は医者がキチガイ扱いされたりして。笑
2010/06/16
aki
表題作はシドニー・ルメット監督、レジナルド・ローズ脚本の映画史に残る名作『十二人の怒れる男』のパロディ。十分おもしろく、声を出して笑える個所もあったが、同様に『十二人の怒れる男』をモチーフにした三谷幸喜『12人の優しい日本人』と比べると、正直、見劣りがする。完敗といってよいかも。細部、伏線、本歌どりの趣向(目がよくない→耳が聞こえにくい)など、いずれも三谷作品のほうが優れているうえ、一番いけないのは(映画大好きの筒井なのに)『十二人の怒れる男』へのリスペクトが感じられないことだ。三谷のすごさを思い知った。
2014/12/06
小説大好き
別の方の感想「三谷幸喜に完敗している」に真っ向から意を唱えようと思い、三谷作品を色々と鑑賞したり、論を整えていたのですが、やめました。正直三谷作品が優れていると感じた事は私は一度もないですし、その理由もあるのですが、ここに書くのもなあ。色々言いたい事もあり、釈然としないですが。そもそもあれと本作とでは見どころも指向性も大分違いますし……ともあれ、本作が筒井作品の中でもとりわけ人間心理の利己的俗物的側面を過度に強調しすぎた部類のものである事は間違いないと思いますので、その辺の好き嫌いはあるかと思います。
2022/08/31
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