ロートレック荘事件 (新潮文庫)
ロートレック荘事件 (新潮文庫) / 感想・レビュー
W-G
新本格の作家さんたちが叙述トリックをしこたま乱発しているので、今読むと衝撃度はそれほどでもないです。ただ文章力の差なのか時代のせいなのか、新本格の作家さんでは出せない端正な味わいがあります。さらっと読める小品的ミステリの傑作でした。
2016/03/08
サム・ミイラ
また映画化不可能な作品を読んでしまった。なぜか避けていた筒井康隆。氏を代表する叙述ミステリーということで期待を胸に読んだ。いや良く出来ている。西洋の古典のような雰囲気。見取り図に至るまで計算され尽くされている。更には挿入されるロートレック作品の挿絵も愉しく実に粋な小説だ。ただこの動機はあまりにクレイジーで犯人も分かってしまうため少々残念。いっそ同性愛なら共感出来たかも。語り手が頻繁に入れ替わるのは斬新だが反則ギリギリな気もする。しかしこのまるでマジックのようなトリックの為と思えば納得するしかない(笑)
2016/01/30
ehirano1
各章に一文字のタイトルが付いているのですが、第十七章の「解」に至ってはもはや問題集の解答解説レベルで、この推理の根拠は〇〇ページの□□行目、という親切ぶりで思わず笑ってしまいました。もしかして殺人事件のプロットなんかよりもコレがやりたかったのかなwww。
2020/09/20
ナルピーチ
サクッと読める頁数なのにそのトリックはとても秀逸で凄く鮮やかに騙された!そんな一冊だ。画家“ロートレック”の作品が彩られた洋館に集まった男女。そこで発砲された拳銃、一体誰が?警察の捜査の中、第二・第三の殺人事件が巻き起こっていく…。稀代の文豪“筒井康隆”が描く本格ミステリ。読み進めながら何か違和感を覚えつつも答えに辿り着けなかったが上述の通り、気持ち良く騙されたので文句無し!これだから小説読むのはやめられない!
2021/02/14
夢追人009
鬼才・筒井康隆さんが推理小説の世界に真剣に真っ向勝負を挑んだ騙しのテクニックが冴え渡る叙述トリック・ミステリの不朽の名作。本書のタイトルのロートレックは実は障害者を象徴する意味のみなのですが、途中に代表的な絵画作品が数多く掲載されていてお得な気分が味わえますね。まずブラックな笑いがお得意な著者には珍しく「侏儒褒章」なんて戯言以外は至って生真面目その物の筆致に驚きましたね。冒頭から微かに違和感を覚えながら著者が読者を誤認させ誘導する手管に完全にしてやられましたね。ラストに漂う悲劇的な哀感にも心が痛みました。
2019/03/23
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