僕は模造人間 (新潮文庫 し 29-1)
僕は模造人間 (新潮文庫 し 29-1) / 感想・レビュー
優希
醜悪でありながら傑作というシュールさがたまりません。「青春」という舞台の上で演技しつつ、その批判へと情熱を傾ける亜久間一人。異常な人格で意識過剰な夢想的偽少年のひねくれた自我と初々しい愛と性が混じり合い、理解と不理解の中にいるようでした。自虐的であり、思いつかない言動と屁理屈が、誰しもを模造人間として眺めているようで逆に気持ちよかったです。気持ち悪さと憎たらしさを感じる作品でありながら面白かったです。
2016/04/19
nakanaka
亜久間一人という人間の青春小説。相当変わっていますね、彼は。高校生になり恋愛をし徐々に共感を覚え始めたものの、それまではかなり取っ付きにくい捻くれた少年で嫌悪感しかなかったかもしれません。それでも彼特有の感覚だからこそのストーリー展開に引き込まれ夢中で読んでいました。自分自身は誰でもない、ただの模造人間であり誰にでもなれるといった主人公のキャラ設定は哲学的に思えました。そうであれば羞恥心や虚栄心などといったものから解放されるのに。そういった生き方には憧れすら感じますが実際はどうなんだろう。空しいかなぁ。
2021/05/07
メタボン
☆☆☆★ 修辞法が面白くてどんどん読み進めるのだが、読み終わった途端、物語が離れていき、空虚な気分だけが取り残される。島田雅彦を読むといつもそんな読後感である。もちろん、過去に読んだ島田雅彦の作品の筋など覚えてはいない。そんな私も典型的な「模造人間」なのかもしれない。恋愛の描写は相変わらず「青臭く」、真弓やちずるといった女性も平面的、主人公もいつもと同じ観念的な「オナニスト」。面白いけれど、刹那的であり、深く得るものがないのが残念。
2016/08/01
ちぇけら
ちんぽこを擦り続けていたら気持ちいいものが出た。精通である。それからは日に何度もちんぽこを触ったが、軽佻浮薄な僕は仲間外れにされなかった。だが僕はずっと弱者として存在することを望んでいた。つまり女に滅茶苦茶に姦されたくてたまらない性春を過ごした。狂っている。というのは嘘で交接が怖くてマスターベイションばかりしていた。というのも嘘で僕は精液を垂れ流すだけの模造人間なのだ。それゆえ死んでもいいし去勢して女性ホルモンを注入するのもいいだろう。「実のところ、僕ちゃんだって、どうされたって構やしないんだもん。」
2019/06/27
パラ野
何年ぶりかの再読。初期先品らしい、三島由紀夫への執拗な言及と、徹底した終わった感と繰り返し、そんな模倣。幼少期のオナニーは大江健三郎の『セヴンティーン』だったのか!二重人格っぽさや、夢の挿入など、相変わらず面白いなと。
2014/11/23
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