優しいサヨクのための嬉遊曲 (新潮文庫)
優しいサヨクのための嬉遊曲 (新潮文庫) / 感想・レビュー
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️82年の作品です。島田さんの著作は初めて読みました。22歳の時の作品だそうですが、何とも不思議な魅力のある作品でした。学生時代の若い頃にしか描けない表現にたくさん出逢えて、当時感じていた葛藤や悩み、想いを随分久し振りに想いかえす事が出来ました。人生では様々な選択をしながら進んで行きますが、モラトリアム最期のちょうどこの頃から自分で起爆点を敢えて造って、選択肢である可能性を増やす事が必要だとのんびりした男子でもようやく気がつくんですよね。女子はとうの昔から実践して研鑽を積んでいるもんです。
2014/09/27
ちぇけら
完結しなかった青春。焦点までとどかなかった君の実像は永遠に結ばれないから、せめて、せめて不可思議にうごくその唇にチュッとできれば。ああ、ぼくのいとしい幻。触れられなかった身体が、君の匂いだけをたよりに細胞分裂してぼくを包みこむ。包みこまれる。あたたかい子宮のような安らぎ。君の唇も、君の乳房も、君の太ももも、ぼくのもの。そしてぼくは君のもので。ぼくを好きにしてほしくって。だけど君のVirginiaの源だけは濃い霧がかかって、ねえ君、ぼくが大好きな君は、手をのばせばのばすほど、あとかたもなく消えてなくなる。
2019/09/08
梟をめぐる読書
80年代、内面の「空白」を抱えながら作家としてデビューを果たした三人の若者がいた。高橋源一郎、村上春樹、そして島田雅彦だ。しかし解説でも触れられている通り、もっとも苛烈に、かつドラスティックに小説の人物から「内面」を剥ぎ取ってみせたのは、間違いなく島田雅彦だろう。「遅れてきた左翼青年」であるところの彼らはもはや、拠るべき思想や運動を何ももたない。孤独な夜をひとりで迎えることもなければ三島由紀夫の死に心を乱されることもないし、無闇にパスタを茹でたりもしない。だがその内面性の欠如は、もちろん他人事ではない。
2014/12/17
ソングライン
1980年代の始め、ソ連の反体制運動を研究するサークルに参加する大学生の主人公。そこには暴力、デモ、論争はなく、真面目に機関誌を発行し、健全な講習を企画します。政治的関心を持つ真面目なメンバーもいますが、ホストになり、奔放な生活を送る者もいます。主人公は、オーケストラでバイオリンを弾く女の子に夢中になり、やがてサークルを辞め、オーケストラに参加していきます。優しいサヨクはもはや左翼ではないのですが、憎めないのです。同世代の青春を懐かしく思い出す読書です。
2020/11/14
林 一歩
年齢を重ねると比例してこの作品への評価は厳しくなる気がする。なんかね、読んでいて腹が立つのですわ。
2012/10/15
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