北原白秋詩集 (新潮文庫)
北原白秋詩集 (新潮文庫) / 感想・レビュー
匠
北原白秋の詩集は色々あるが、白秋が作詞した「からたちの花」が描かれた美しい装丁が気に入ってこちらの新潮文庫版を買った。で、”邪宗門”の中の「空に真っ赤な」で、『必殺仕事人』のオープニングナレーションはここから引用されたのだなと気づいてから、どんどん詩の世界に引き込まれていった。白秋の詩はさまざまな色が登場し、情景がオールカラーでイメージしやすい。中でもひときわ赤と青が目立つ。さらには、さみしい、泣くという表現も多く、言葉の端々には毒も感じる。そこから乙女的なせつない心情が浮かび上がるのが印象的だった。
2014/06/13
新地学@児童書病発動中
言葉の魔術師、北原白秋の詩魂を存分に味わえる詩集。以前読んだ岩波文庫版とは収録されている詩が大きく異なっており、官能性を前面に出した詩が多く取られている。私は『水墨集』の素朴な味わいが好きなので、ここに収められている詩のむせ返るようなイメージの連なりにはやや閉口したが、それでも郷愁と恐怖、官能性が一つの詩の中で溶け合った『思ひ出』の詩群の美しさには圧倒された。「思ひ出は首すぢの赤い蛍の/午後のおぼつかない触覚のように、/ふうわりと青みを帯びた/光るとも見えぬ光?」『思ひ出』「序詩」より。
2015/06/20
なる
名前は有名なのに作品にあまり触れたことがなかったので、背伸びして読んでみる。代表作といわれる『邪宗門』のインパクトが凄い。まさに言葉の魔術師。個人的にはボードレール『悪の華』を彷彿とさせた。童謡とか校歌の詩を書いている人、というイメージしか無かったのだけれど、それらのシンプルな作品が収録されている比率は少なく、どちらかというと本書では文学的作品を味わう傾向が強い。ただどれもリズムに乗せて読むような感覚で、後の童謡につながる作風の片鱗はあったのかも。『水墨集』に収録されている作品がどれも素朴で好き。
2021/02/28
まさむ♪ね
めくるめく色と匂。極彩色の万華鏡。格調高き魔睡の香木。鼻腔をつらぬく官能の調べは夢幻へといざなう地獄蝶。くるくるひらひら、青に赤、銀や金をはきだしながら乱舞するさまは、愉悦にひたる女王さながら。閃く翅の天鵞絨は、なつかしいカステラの縁の味。その濡れそぼつ漆黒の瞳からこぼれ落ちる圧倒的「夜」はすべてをのみこむ。からたちの花の白をのこして。
2015/05/22
藤森かつき(Katsuki Fujimori)
北原白秋の誕生日に。幾つかの詩集から集められているので、学生の頃、読んで以来の白秋を読むのに丁度良かったかな。明治・大正・昭和と、詩人として40年とは凄い。詩には苦手意識が強いのだけど、結構初っ端の「邪宗門」の中の「濃霧」に惹かれた。勿論「邪宗門秘曲」も。官能的で意味深に淀んだ感覚が何か好ましい。解説では官能的印象詩と呼んでいた。「邪宗門」自体を俄然読んでみたくなった。解説によると白秋は発禁になったこともあるようで、でも引っかかったのは、たった一行らしい。他にヤバそうな所、色々あるような気がするんだけど。
2020/01/25
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