海峡―海峡・幼年篇 (新潮文庫)
海峡―海峡・幼年篇 (新潮文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
伊集院さんの自伝的な部分が多分に含まれた少年小説です。読書対象はというと少年から大人まですべてなのでしょう。私など年寄りにとっても昔懐かしいような感じで読んでいます。最初に読んだ時とはかなり印象が異なります。昔の子供時代というのはこんな感じだったと思われることが多くあります。人との出会いや別れがうまく書かれています。解説にもありますが井上靖の三部作と並んで傑作ですね。
2016/03/11
さと
本来 人はこんな環境下にいるほうが人間らしくなっていくのだろうか。戦後のあわただしい時代、秩序もありやなしやの港町で、父親の力と存在に圧倒されながらも男としての伸びしろを感じずにはいられない。生きることの過酷さ、運命の残酷さをわずか10歳で味わいながら心はたくましく育っていく。英雄が抱くほのかな恋心が、闘うだけでなく守り抜く強さも諭したようで心和んだ。これから父をどう捉えどう超えていくのか楽しみに 第二部へ。 やはり私は伊集院氏の作品はたまらなく大好きだ。
2015/09/04
NAO
自伝的小説、幼年編。周防灘の北岸の、二つの岬にかこまれた小さな町の「高木の家」と呼ばれる家。家長の長男英雄の目から見た普通の家庭とは違う自分の家の在り方、知人友人との別れが描かれている。まだ大人たちに守られている幼年期、だがある夜、英雄は父親の裏の仕事に同行した。それは、父親が英雄を子どもではなく大人とみなすという意思表示だったのだろう。英雄は、確かにそこで何も知らない少年ではなくなった。それでも、まだ、英雄にとっては、父は聳える山のような存在のままだ。
2022/10/10
B-Beat
★「ちゃんぽん食べたか!」を読んだ後なぜか無性に少年の成長を辿る自伝的な作品が読みたくなり、そう言えばあの本が確か…読友さんの感想に思うところがあって買い…と積読本棚から手に取った。この作家さん初挑戦。いかに過去において読書儘ならない時期があったんだと自己分析。著者の経歴なども再確認して読み始める。舞台は瀬戸内海の小さな港町。題名の海峡とは日本と朝鮮半島、本州と九州、九州と四国とを隔てる海峡?九州東海岸にずっと住む身としてはそんなところに親近感もあって淡々と読み進めることができた。残る2巻も続けて読もう。
2016/01/22
キムチ
変則的なとっかりで、逆読みする羽目となったが、3部作読了。「岬へ」が一番、感動し、これはとつとつとした印象だった。全体のイメージとしては五木氏「青春の門」と似ていたが、読みながらふと宮本氏の「泥の河」も思い出した。最後のシーン・・「ふと見上げたら岩の上の斉次郎の姿が消えていた」場面。筆者の心の中で、「葛藤しつつも大きな存在にそびえたつ高木一族のドン、斉次郎と云う父親を離れたいと思いつつも畏敬して行く」筆者の心象の芽生えをよく現わしている。
2015/03/02
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