壁画修復師 (新潮文庫 ふ 18-5)
壁画修復師 (新潮文庫 ふ 18-5) / 感想・レビュー
ふじさん
「五十年目のカルバドス」は、親友の確執と和解を描いた作品。「水を流して」は、女主人をめぐる恋愛と母娘の葛藤劇。「生と死のコラール」は、宿命的な親子劇。「タニアの城」は、一族の対立劇を自分自身の過去と重ね合わせて描いた作品。波乱万丈の人生を生きたアベ(フランス語で神父)は、神父のごとく、壁画修復の仕事を通して出会った訳ありの人々の苦悩や傷心を修復して見せる。男女の見えない真実を露にする手際の良さと人間関係の修復に巧みに手を貸すアベの描写こそ、本書の一番の読みどころ。心憎い上手さだ。
2022/06/01
大阪魂
藤田さん初読み!乙女の日本史に続いて連荘でおもしろかった!フレスコ画の修復にフランスの村々をまわる日本人壁画修復師アベが主人公。壁画だけでなく、村々で出会う人が抱えた、哀しい愛憎の人間関係まできれいに修復していく。ギャラリーフェイクの藤田さんもいいけど、このアベさん、むちゃくちゃいい!!舞台になってるフランスの村の風景とか料理とかお酒とか、細部もきっちり書いてるから、wikiみながらむっちゃ楽しめた!アベさんシリーズ書いてくれてたらよかったのになあ!藤田さんの他の本も読んでみよ!
2017/10/07
bluemint
解説にあるような、日本人の壁画修復師が滞在しているフランス人の家族関係のトラブル解決と癒しを行うというものではない。彼が積極的に行動するというより、むしろ触媒の役目で、外国人の彼に話すことでフランス人自ら解決に向かう。フランス人、特に地方の人たちは保守的で日本人などを受け入れないように思っていたが意外だった。地方の自然と、住人の心の動きが丁寧に書かれ、重苦しい気候と相まって重厚な雰囲気を感じた。話自体は大きな事件は起こらず、不倫などの叶いにくい恋愛の主題が多かった。
2019/07/26
エドワード
フランスの田舎町の小さな家族の愛憎を描く五編の短編集。日本人壁画修復師アベが、一歩離れた立場から彼らの愛憎を、それこそ壁画のように修復していく。その過程が何ともいえず穏やかで優しい気持ちにさせる。エディット・ピアフの「水に流して」が出てきたのにはニヤリとさせられた。随所に折り込まれるフランスの田舎町の風景や人々のざわめき、そして郷土色豊かな料理の描写が印象的。
2011/06/29
sa-ki
フランスの田舎町の景色を想像したり、印象的なシーンがあったり、ショートムービーを見たような読後感。料理や音楽もさりげなく華を添えていた。
2009/11/30
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