虜 (新潮文庫 ふ 18-6)
虜 (新潮文庫 ふ 18-6) / 感想・レビュー
じいじ
舞台設定は葉山の別荘と至極シンプルわかりやすい。ヒリヒリするミステリー仕立てで面白い。横領で指名手配された男が、逃走疲れで忍び込んだ義父の別荘で妻とまさかの再会。離婚を迫る妻、しかし夫への微かな未練もあるのか納戸で夫を匿うことに…。夫の耳を気にせず、隣室で愛人との情事は、妻の演技なのか?本気なのか?(妻は押入れの節穴から覗かれているのは知らない)―夫の妻への嫉妬や焦りの心情描写、妻の簾越しの情事の描写が艶めかしく美しく淫靡にならないのは好ましい。女の強かさに反して、夫への侘しさが残る恋愛サスペンスです。
2020/01/27
のり
「逸平」は銀行の支店長だったが、浮気や横領が発覚し、全てを捨て逃亡生活を送っていたが行き詰まり、義父の所有する別荘を一時の安寧の地と定め忍び込んだが、そこには妻が生活していた。離婚を条件に数日匿ってもらう提案にのる。納戸で息を潜めていたが、押し入れに数ミリの節穴があり、隣室の様子が見える事に気づく。逃亡して半年で妻の生活も一変し、すでに男もいる事実を穴を通して知る事に。しかも情事まで覗き見てしまう。嫉妬しながら自らの愚行を反省するが…迫りつつある警察の手と離れつつある妻の気持ち。
2019/03/31
遥かなる想い
ミステリ風快楽サスペンスで、密室から妻の姿態を 覗きながら、灼けつくような嫉妬に痺れる男と、その気配を意識しながら悦楽に溺れる女という設定は安部公房の『密会』を想起させる。本の表紙もやや扇情的で恥ずかしかった。ブックカバーが必須の本である。
mr.lupin
横領で指名手配されて逃亡していた男は、忍び込んだ誰もいないはずの義父の別荘で、思いがけず妻と再会する。夫を狭い納戸に匿いその夫は僅かな隙間から隣室を覗きみる。妻は新たに別の男と… 中々と離婚に踏ん切りが付かない夫にイライラしながら時間が過ぎてゆく。妻に未練が残り嫉妬心が沸く夫の心情にはまるで共感できなかったが、楽しめた作品だった。映画にもなっているようなので、是非一度観てみたい。⭐⭐⭐⭐⭐
2022/09/19
オカピー
夫婦とは何なんでしょうかね。逸平の優柔不断さが、浮気と横領事件を起こし、どうにもならなくなり逃亡の旅を続ける。逃げ込んだ先が、義父の別荘。そこで繰り広げられる悲しくもあり、面白くもある物語。喜劇でもあるのか?最後は、逸平の優しさが出過ぎて、子供の凧を取ってあげたために捕まってしまうドジな男。そういう男が良いという女性もいるから、世の中捨てたもんじゃない。納戸の中の節穴から見る世界感は、江戸川乱歩の小説でもあった視点かなと一瞬思いました。
2023/08/15
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