深川にゃんにゃん横丁 (新潮文庫)
深川にゃんにゃん横丁 (新潮文庫) / 感想・レビュー
雪風のねこ@(=´ω`=)
初読。図書館の返却コーナーで見かけて猫物だと手に取った事もあるけれど、後書きの解説も大きな決め手であった。人も猫も動物も、何変わりなく親より生まれ、次世を生み育て、生を全うし、死んで行く。猫の出てくるシーンは少ないけれど、同格に描いている。作中の小林一茶の句、蛤になる苦も見えぬ雀かな。正に著者の描きたかった事ってこれなんだろうと感じた。人生には辛苦が伴うが、死ねば地に還る(=蛤になる)そう考えるなら、どうであっても生きている事こそが華なのだ。自分の出来る範囲で世話を焼き、また焼かれる。長屋物語は好きだな。
2017/03/23
ぶち
「にゃんにゃん横丁」なんて、まるでラノベのタイトルみたいですが、そこは宇江佐真理さんの小説です。裏店に暮らす人々の人情の厚さを描いて、大人の読者の感性にしっかりと訴えてきます。夫婦や男女の悲しい別れ、戸惑ってしまうような出会い、報われない想い、子を見守る親の眼差し.....深川の裏店の住人たちにすっかりとのめり込んでしまっています。そして、タイトルが示すように猫たちがいい味だして、この小説をいっそう気持ち良いものとしてくれます。最後のシーンなんて、猫好きじゃなくてもジーンときてしまいます。
2022/03/14
じいじ
宇江佐真理の持ち味がじっくり堪能できる江戸下町の人情話です。舞台は今も昔の名残をとどめる深川。ノラ猫たちも安心して徘徊できる横丁住人たちの温かくて、ざっくばらんな人間ドラマがたまらなくいいです。猫のお産にも、やさしい気づかいに感動した笑みがこぼれます。別れた父と娘の再会では、娘の健気さに涙が滲みます。いまも存在するのなら、ぜひ住んでみたい人情溢れる〈深川にゃんにゃん横丁〉。オススメの一冊です。
2017/03/08
ふじさん
深川の喜兵衛店のにゃんにゃん横丁を舞台にした市井の物語。大家の徳兵衛、書役の富蔵、町内のご意見番で世話好きのおふよの幼馴染の3人が良い味を出した人情噺がいい。特に、おふよの個性が際だっていて、作者の宇江佐真理を彷彿とさせるキャラがなんとも言えない。横丁に住む様々な事情を抱えた人々が登場し、喜怒哀楽に溢れた話が次々展開して、最後までつき切る。いつもながらの庶民目線で描く人々の巧みな人物描写や物語の筋立てが心憎い。
2021/12/25
優希
宇江佐真理さん追悼も兼ねて手にしました。深川にゃんにゃん横町、なんて素敵なんでしょう。お江戸深川の長屋通りには近所の猫が沢山です。愛らしい猫たちと共に語られる人情物語。様々なことがあるけれど、あたたかい語り口調で人情味を感じさせます。猫たちも横町の住人として扱われているのにほっこりしました。とてもあたたかい気持ちになれます。
2015/11/09
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