古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫)
古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫) / 感想・レビュー
じいじ
江戸は浅草で古着屋を営む喜十が主人公。縁は異なもの、19歳の娘・おそめが自害するのを寸前で助けたのが縁で二人は夫婦に。とにかく、この夫婦が仲睦まじい似合いの夫婦で、読み手を和ませてくれます。心のこもったおそめの来客へのもてなしの良い女房ぶりに惚れ惚れします。雪の降る或る夜、おそめが自分から亭主の布団へ入って来る場面「お前さんは、温石のようなお人だ…」。何とも夫婦の心のぬくもりを感じさせる素敵な件です。夫婦唯一の悩みは、子供に恵まれないことだけ…(最後には男の子が…?)。とても、ホッコリする物語です。
2016/12/13
新地学@児童書病発動中
しみじみとした味わいのある宇江佐さんの連作集。あっと驚くような趣向はないが、読んでいてほっとした気持ちになれる。古着屋の主人喜十が主人公。喜十はひょんなことから北奉行所の同心の仕事を手伝うようになる。古着屋を舞台にしているところが、いかにも宇江佐さんらしい。古着と言っても江戸の庶民にとっては貴重なものだった。藪入りの前に女性たちが喜十の店に来て、お気に入りの服を探す様子が、華やかに生き生きと描かれている。登場人物たちの喜怒哀楽と江戸の季節の移ろいの描き方が巧い。何度も読み返したくなる素晴らしい作品だ。
2017/12/31
もんらっしぇ
伊三次シリーズを読み切ってしまい再読はまだだしこれからどうしたものかと思いつつ、えいやっと書棚から半ば目を瞑って取り出しますとやはり捕物帳で新シリーズでした。今回の主人公は「古手屋」つまり今で言う着物リサイクル業者の主人・喜十。伊三次ほどイケメンでもなく、ぱっとしない男のよう。嫁の来てもない彼は、柳原の土手で首括りをしようとしていた若く可愛いおそめを助け家に連れ帰ります。やがておそめは、喜十の母親であるおきくの人望に心酔し喜十の妻になると決心。子がいないことを除けば日々の暮らしには不満はない喜十でしたが…
2021/11/28
ぶんこ
朱川さんの解説が良かったです。宇江佐さんのお人柄が伝わってきました。出版社のパーティーの後は2次会には行かれないと、別の本の解説で読んだばかりだったのですが、仲良し作家さんと2人で女子会をされていて、偶然朱川さんと遭遇、その後縁が続かれたようです。解説を読んだ後は、益々この本の良さが染み渡りました。喜十が妻のおそめさんと一緒になった話が良かったです。喜十のお母さんが明るくて素敵でした。上遠野さんの調子の良さに、喜十が気の毒でした。嫌々事件に関わってしまいますが、当事者にとっては、喜十さんでよかったですね。
2015/11/25
shizuka
地道に古着屋を営んでいるだけなのに、あれやこれや隠密廻りの手伝いをさせられる喜十。多少なりともお手当あれば、まだ納得できるのにいつもタダ働き。隠密が使う衣装も全部喜十持ち。一応帳面に「ツケ」てはいるものの。妻のおそめと喜十の間には子がいない。なかなか恵まれないのだ。それがもとでいざこざすることはないけれど、ふたりとも一抹の寂しさを抱えて、そして諦めている。これ最終話で妊娠するのかな、と思いながら読んでいたら、それ以上のハッピーな出来事が!どの話も読み応え充分だけれど、最後、捨ちゃんがぜーんぶ持ってった笑
2017/02/04
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