本にだって雄と雌があります (新潮文庫)
本にだって雄と雌があります (新潮文庫) / 感想・レビュー
みも
確かな語彙力と博覧強記に裏打ちされた、軽妙な言葉遊びの幻想譚。博識を鼻にかける風もなく、標準語と関西弁を混在させつつ、さらりと紛れ込ませる諧謔の妙。そのテンポ感と言葉のセンスの良さに、幾度、声をあげて笑った事か。だが油断して心を弛緩させていると、脳天をガツンと殴られる。何故なら、太平洋戦争末期のボルネオの密林行軍の描写があまりに凄惨で苛烈だから…。大岡昇平『野火』を想起させる圧倒的な力で僕をねじ伏せる。それはまるで、ユーモラスな形状の軟体生物の内部に隠された熱く熱した鋼鉄の核。迂闊に触れると大火傷を負う。
2020/04/06
rico
タイトルに、うん、似たような本がいつの間にか増殖することあるよね、って読み始めたら・・・マジかあ~!思わず叫んでた。モリミーをぎゅっと濃縮したような文体で、怒涛のように繰り出される笑いと皮肉と洞察に満ちた言葉、言葉。と思ったら、いきなりボルネオの密林、地獄の戦地に放り込まれる。何これ、何これ、パニックしながらたどりついた大団円。そっか、これは本を愛し本に愛された(憑りつかれた)一族と本たちとの夢物語。幸せな結末。読みたい本を全て読むには人生は短かすぎる、そう思ったことがある人なら、きっとはまると思います。
2020/05/27
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
古風な文体で語られる深井家サーガ。本好きの祖父與二郎が語る本が増殖するわけは、雄と雌の本が子供を産むから!?登場人物が皆おもしろく、少し古風で愉快な語り口は森見登美彦さん風だなーなどと油断しながら読んでいたら、中盤、語り手の祖父與二郎の戦場での日記で涙腺崩壊してしまった。涙と鼻水とめどなし。物語を読む楽しみを久しぶりに思いっきり堪能させてもらった!という読後感、スッキリ。
2017/10/24
つねじろう
あなたの家の本もいつの間にか増えてない?その答えが分かるお話。「幻書」に魅入られた一族代々の物語が大阪弁で語られる。それが冗談と駄洒落まみれの洪水となって行方も見えずだらだらと続くので途中で目眩がして来る。あかんこらあきまへんと言いつつだらだら読んでるとしょうも無いネタに思わず笑ってしまうようになり次第にその摩訶不思議の世界に引き摺り込まれ後戻り出来なくなる。ブラジル料理のフェジョアーダ食べた時みたいに一口目は面妖だけど段々癖になる感じ?ちょっと危険。飛ぶ本と6本脚で翼を持つ白象も本当に居る気がして来た。
2015/09/19
ナミのママ
第1回書店員ビブリオバトルの最優秀作品。youtubeで拝見し、なんともそそられて読んでみたくなりました。とっても不思議な本、書店で見てもまず手にもとらないジャンルです。感想をひとことでいえば「をかし」。みごとであり、おもしろく、こっけいであり、ある意味、風情も感じます。書物に雄・雌があり、並べ方によっては子供を作る、蔵書が増える、幻書という・・というタイトルの意味と、本ストーリーがまったくどうつながるのか・・。説明のしようもなく、つまらないと感じるか、はまるかも読者次第という感じの一冊でした。
2017/04/21
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