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爪と目 (新潮文庫)

爪と目 (新潮文庫)

爪と目 (新潮文庫)

作家
藤野可織
出版社
新潮社
発売日
2015-12-23
ISBN
9784101202716
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爪と目 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ゴンゾウ@新潮部

たくさんの方のレビューにあるように書き出しの一文から引きずりこまれて最後まで一気に読み切ってしまった。母親の不審死の直後に不倫相手と父親が結婚してしまう。その継母を3歳児の私の目が観察する。実母の死、父親の浮気、継母の不倫。本来見えないものが私の目を通して淡々と明かされる。何が起こるわけではないがこの物言わぬ目に追われる得体の知れないぞくぞく感は何なのだろう。

2017/02/04

hit4papa

不倫の末に妻の座を手に入れた女性が、継子の視点から縷々、語られていきます。母親ではない<あなた>の日常が、<わたし>の幼い目から、赤裸々にされていくわけですが、主体から見えない部分まで<わたし>の語りに表れてくるのは、違和感がつきまといます。長じた<わたし>が過去を振り返る中で、出来事を再構築したと考えるべきなのでしょうか。純文学ホラーなる冠で注目された本作品。終始心の奥底が見えなかった<わたし>だけに、ラストの展開は衝撃的です。鬱屈した気分が晴れやかになる暗い欲求を自身の中に見出してしまいました。

2016/12/09

眠る山猫屋

ホラーで芥川賞?興味深い。という事で読んでみた。う~む合わない、特に表題作。人称で惑乱させられ、世界観も受け入れづらい。三歳の娘〝わたし〟から見た新しい母親〝あたし〟との関係性の話なのだが、ディスコミュニケーションしていて母子が噛み合わない世界に放り出される感覚が苦手。作者の狙いなんでしょうが。『しょう子さんが忘れていること』と『ちびっこ広場』は興味深く読めた。日常とも(暗転した)非日常とも受け取れる終幕、こちらは嫌いじゃない。

2020/04/21

dr2006

あなたはなぜ目がシバシバするの?わたしはなぜ爪を噛まなくちゃいけないの?そんな躊躇なき質問が、鋭い短剣で神経の裏側を撫でまわすかのような文筆によって描写される。目を動かすのも、爪を伸ばすのも自分だ。爪と目の間にはそれぞれが近づくことを拒む意思がありそれもまた自分だ。ハードコンタクトレンズはホコリと乾燥に弱いのは知っている。あぁ、これが芥川賞受賞作かと目を閉じた。

2017/03/25

かぷち

なんだろうこの焦点の合わないゆらゆらとした感覚は。コンタクトを外した目で見ているような、薄ぼんやりとした輪郭のない世界観。爪を噛む癖のある3歳児の”わたし” 、わたしの父とあなた(父の再婚予定の女性)。わたしの心情描写はほぼ無く、得体の知れない不気味な印象を抱かせる。語り手はわたしだが、あなた視点で話は進む。構造的にややこしく歪んでいるように思えるが、この歪みが独特の雰囲気作りを担っているのか。この不穏さを「ホラー」という枠組で語って欲しくないが、確かな物の存在を揺さぶってくるような芥川賞受賞作でした。

2023/09/16

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